2021年03月19日 13:37 公開

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が18日、同国のテレビに出演し、アメリカのジョー・バイデン大統領に「反撃」した。バイデン氏がプーチン氏について、「人殺し」だと思うとインタビューで述べたことを受けたもの。

プーチン氏この日、ロシアのテレビで、バイデン氏の発言について、「そっちこそそう(人殺し)だ」と反論。生放送での公開対話をバイデン氏に求めた。

バイデン氏の「人殺し」発言は、ロシアの治安当局が同国の反体制派政治家アレクセイ・ナワリヌイ氏を殺害しようとしたとされる疑惑をめぐるもの。プーチン氏はこの疑惑を否定している。

バイデン氏は米ABCニュースが17日に放送したインタビューで、プーチン氏を「人殺し」だと思うかと聞かれ、「思う」と答えていた。

また、昨年の米大統領選にロシアが介入した疑惑をめぐり、プーチン氏は「代償を払うことになるだろう」と述べていた。

<関連記事>

ロシア政府はこれを受け、アナトリー・アントノフ駐米大使を同日、モスクワへ召還。「行き詰まった」両国関係を「後戻りできないほど悪化」させないよう協議するためだとした。

BBCのサラ・レインズフォード・モスクワ特派員は、ロシア国営メディアがバイデン氏の発言は一線を越えたものだとして、激しい怒りを示していると伝えた。

同特派員はまた、ロシア政府の報道官が、アメリカとの関係は「非常に悪い」と語ったと報告。さらなる悪化が予想されると解説した。

プーチン氏の発言

この日、テレビに出演したプーチン氏は、「悪口を言う人はみんな、それが自分に帰って来る」という、ロシアの学校の遊び場でよく聞かれる表現で、バイデン氏に反論した。この表現は英語では、「it takes one to know one」(お互い様、の意味。「自分がそうだからこそ相手がそうだと分かる」)にあたる。

「子どものころ、遊び場で言い争いをした時、『そっちこそそうだ』とよく言っていたのを思い出す」とプーチン氏は発言。

「それは偶然ではないし、単なる子どもの決まり文句やジョークでもない。深い心理的な意味がある。私たちは常に他者に自分の姿を見るし、他者がどれほど私たちに似ているかを思う。その結果として、私たちは(他者の)行動を評価し判断する」

プーチン氏はまた、アメリカについて、先住アメリカ人を集団虐殺し、第2次世界大戦で広島と長崎に原爆を投下して一般市民を滅ぼしたと非難した。

その後、プーチン氏はバイデン氏に対し、19日か22日にオンラインでの公開直接対話を呼びかけた。

プーチン氏の報道官ディミトリ・ペスコフ氏はこれまで、アメリカの非難を裏付ける証拠はなく、2国間の関係をさらに悪化させることになるとコメントしている。

ロシア外務省は駐米大使の召還を発表した際、「アメリカ政府がロシアとアメリカの関係を行き詰まらせ、両国関係は厳しい状況に置かれている。これを改善する方法を見つけることが我々にとって最も重要なことだ」と述べた。

バイデン氏の発言

バイデン氏のインタビューでの発言は、昨年11月の米大統領選でプーチン氏がロシア側による介入を承認した可能性があるとする、米国家情報長官室(ODNI)の報告書をめぐって出たもの。

同報告書はロシアについて、米大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が有利となるよう動こうとしたと非難した

アメリカはこの報告書を受け、来週にもロシアに制裁を科すとみられている。

バイデン氏はインタビューの中で、1月下旬にプーチン氏と電話会談をした際、米大統領選介入疑惑への対抗措置を講じる可能性があると警告したと説明。

「彼(プーチン)は代償を払うことになる」と述べた。

その代償は何かと問われると、バイデン氏は「じきに分かる」と答えた。

また、プーチン氏を「人殺し」だと思うかとの質問には、「そう思う」と回答した。

インタビュー放送後の記者会見で、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官はロシアとアメリカの関係について、トランプ前政権の時とは違うものになると述べた。

「確実に、ロシアは自分たちが取った行動に対して責任を問われることになる」

2人の確執

バイデン氏は、バラク・オバマ政権で副大統領だった10年前、プーチン氏とクレムリンで会談した。プーチン氏は当時、一時的に首相を務めていた。

バイデン氏はその数年後、米誌ニューヨーカーのインタビューで会談の様子を振り返った。

「私は『首相、私はあなたの目を見ているが、あなたに魂があるとは思えない』と言った」

「彼は私を見つめ返し、笑顔を見せると、『私たちは互いを理解し合った』と言った」

昨年の米大統領選の前には、バイデン氏はプーチン氏について、同氏が旧ソ連の保安当局KGB職員だったことをとらえ、「KGBの悪党」と呼んでいた。

米報告書の内容

米ODNIが16日に好評した15ページにわたる報告書は、「影響工作」と呼ぶ動きをロシアだけでなくイランも展開していたと指摘した。

ロシアの工作については、昨年11月3日の大統領選を前に、バイデン氏の不利になりそうな根拠のない情報を、ロシアとつながりのある人物を通じて広めるなどしたとした。

また、選挙プロセスそのものへの世間の信頼を損なうことを目的とした、偽情報の拡散工作が検討されたと説明。

さらに、ロシア情報機関とつながりのある複数の人物が、バイデン氏をおとしめるための偽情報を、アメリカのメディアや政府高官、トランプ氏の側近や支持者などに次々と提供していたとした。

(英語記事 'It takes one to know one' - Putin on Biden