2021年03月25日 11:33 公開

イギリスのボリス・ジョンソン首相は、新型コロナウイルスのワクチン接種事業がイギリスで成功しているのは「資本主義」と「強欲」が理由だと、与党・保守党の議員らとの私的なビデオ会合で話した。しかし、発言は冗談で、製薬会社を批判するものでも、欧州連合(EU)との対立に関するものでもないと、関係者は主張している。

ジョンソン氏の発言は、英紙サンが23日に最初に報じた。「私たちがワクチンで成功しているのは、資本主義が理由で、強欲が理由なのだよ、みなさん」と語ったという。

複数の関係者によると、ジョンソン氏は議員らとのZoom会合で、この発言をした。その直後「とても熱心に」、撤回すると主張したという。

ワクチン供給をめぐってイギリスとEUが争っていることとは、発言は無関係だという。

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政府関係者によると、ジョンソン氏は企業の利益追求が新製品の開発につながっていることに言及したのだという。

ジョンソン氏はさらに、新型ウイルスのパンデミックにおける製薬大手の活動を称賛したとされる。

ビデオ会議に参加したデイヴィッド・T・C・デイヴィース・ウェールズ担当閣外相によると、首相は「冗談で言っているのだと、完全に明確にしていた。映画『ウォール街』にからめた冗談だった」のだという。

BBCのローラ・クンズバーグ政治担当編集長によると、ジョンソン氏の「強欲」発言について議員の1人は、同氏の隣に座ってチーズやピクルスを次々口にしていた保守党のマーク・スペンサー下院院内幹事長をからかおうとしたものだったと述べたという。

スペンサー氏は、製薬大手を指す「ビッグ・ファーマ」(Big Pharma)という言葉に似た、「ビッグ・ファーマー」(Big Farmer、大柄な農家)というあだ名の持ち主だと、クンズバーグ編集長は説明した。

首相の発言はEUとのもめごとを引っかき回そうとしたものでは絶対にないし、製薬会社を批判したものでもないと、関係者は強調しているという。

英国で進む接種

イギリスではこれまで約2830万人がワクチンを1回以上接種している。これは、全成人の半数以上になる。使用されているワクチンは、英オックスフォード大学とアストラゼネカが共同開発したものか、米ファイザー製のもの。

一方、EUのワクチン接種率は、最新のデータによると、イギリスの3分の1に満たない。

ジョンソン氏はここ数日、欧州首脳たちと協議を重ねている。EU域内で製造するアストラゼネカ製ワクチンについて、EU側がイギリスへの輸出を禁止しないよう、25日の会合で説得するための下地作りだ。

記憶から消すよう要請

今回の発言が出たビデオ会合では、ジョンソン氏はアストラゼネカについて、英政府にワクチンを原価で提供したとしてたたえたという。

会合に出席した議員の1人は、ワクチン調達をめぐる発言をジョンソン氏が取り消そうとしたことについて、「あれほど急いで、あれほど熱烈に」発言を撤回する人を見たことはなかったと話した。

この議員はまた、ジョンソン氏について、「発言した途端にまずい事を言ったと気づいたし、本当に意味してはいなかった」と述べた。

数人の関係者によると、ジョンソン氏は出席者に対し、「あのコメントをみんなで共有している記憶から除去」するよう求めたという。

ジョンソン氏の発言は、イギリスのワクチン接種の取り組みと、EU各国の取り組みを比べたものではなかったとされる。

リシ・スーナク財務相は今月発表した新年度予算案で、7月末までにイギリスの全成人に1回目のワクチン接種を提供するという目標を達成するため、16億5000万ポンド(約2450億円)を追加で振り向けることを明らかにした。

(英語記事 'Greed' helped UK's vaccines success, says PM