2021年03月27日 11:38 公開

地中海と紅海を結ぶエジプトのスエズ運河で大型コンテナ船が座礁し、航路をふさいでいる問題で、紅海で船の「渋滞」が発生している。現場付近で立ち往生する商船の乗組員がBBCに語った。

コンテナ船「マースク・オハイオ号」(アメリカ船籍)の主任機関士ジョー・レノルズ氏はBBCに対し、スエズ運河の南側入り口(紅海)で待機している船舶の数が「指数関数的に増加している」と述べた。

「世界の運航スケジュールに影響を及ぼすことになる」と、レイノルズ氏は警告した。

パナマ船籍のエヴァーギヴン号は23日午前7時40分ごろ、中国からオランダのロッテルダムへ向かう途中、スエズ港のすぐ北側で座礁した。当時、強風と砂嵐が発生し視界が悪かった。

エヴァーギヴン号は、全長400メートル、幅59メートル、重さ20万トン。

船は座礁した後に運河をふさぐように停止しており、双方向からやってくる船が立ち往生している。現場にはサルベージ(引き揚げ)会社のエンジニアらが派遣され、タグボートや浚渫(しゅんせつ)船を使った船の離礁作業が進められている。

エジプトの大統領顧問は、2〜3日以内に事態が収束することを望むと話している。しかし複数の専門家によると、船内のコンテナを取り除く必要がある場合、離礁には数週間かかる可能性があるという。

全長約193キロのスエズ運河は地中海と紅海を結ぶ運河で、アジアと欧州を最短距離でつないでいる。世界の貿易の約12%がこの運河を経由する。

代替ルートには、アフリカ大陸南端の喜望峰を経由する方法があるが、スエズ運河経由よりもさらに2週間かかる場合がある。


レノルズ氏はBBCラジオ4の番組「トゥデイ」で、全長292メートル、重さ5万トンのマースク・オハイオ号が、スエズ港付近でほかの数十隻の船と共に「立ち往生」していると語った。

「そもそも(スエズ運河の)通過待ちの船の列があったのに、その列が指数関数的に増えていることは、みなさんも想像できると思う」、「外に出てみると、周りはどこもかしこも船だらけだ」とレノルズ氏は述べた。

レノルズ氏が乗っている船内ではやるべき作業がまだ数多く残っており、ほかの船と通信する機会が得られていないという。

「これは長時間にわたる待機ゲームだ。ここからはあまり何も見えないし(中略)私たちは船を停泊させ、まるでM5(イギリスの高速道路)の渋滞に巻き込まれているかのように、ただ待っているだけだ」

3月20日以降のスエズ運河を航行する船の動き(コンテナ船の座礁は23日。出典:Vessels Value)


足止めをくらっているにも関わらず、レノルズ氏はエヴァーギヴン号のインド人乗員25人に思いを寄せた。

「船乗りとして、私たちはよく不満を口にする。しかし、ほかの船乗りが苦境に立たされたり、状況改善しようと昼夜を問わず懸命に努力していることも理解している。私たちは皆、そうした経験をしてきたので」

現場では約10隻のタグボートと2隻の浚渫船、掘削機などを使った離礁作業が進められている。

エヴァーギヴン号の技術管理会社であるベルンハルト・シュルテ・シップマネジメントによると、26日にも船の離礁を試みたものの失敗しに終わった。現在は船首左側の砂や泥の除去を重点的に行っているという。

同社は、1時間に2000立方メートル分の物を移動できる特殊なポンプ浚渫機が25日に現場に到着したとも付け加えた。

また、船体前方のボイドスペース(空所)とバウスラスター室の水位を下げるため、大容量ポンプの手配も行われている。

潮位が増すと予想される28日までに、さらに2隻のタグボートが到着する予定。

英海運会議所のジョン・デンホルム所長はBBCに対し、掘削機とタグボートによる離礁が成功しなかった場合、サルベージチームは船の貨物を別の船や岸に移す、船の「軽量化」作業を始めなければならなくなると指摘した。船の軽量化は時間がかかる作業だ。

軽量化作業には高さ60メートル以上に到達するクレーンなど、専門的な設備の導入が必要となると、デンホルム氏は述べた。

「軽量化のプロセスを経る場合、数週間はかかるだろう」

レイノルズ氏は、ペルシャ湾から地中海を経由して北欧に向かうマースク・オハイオ号のスケジュールには、まだ「少し余裕」があると述べた。

「もし5日以上かかるなら、スケジュールを後ろ倒しにすることになる。他の船は私たちよりもずっとタイトなスケジュールで動いているに違いない(中略)世界中の運航スケジュールに影響を及ぼすことになる」

サービス・プロバイダーのレス・エージェンシーズは、26日時点で計237隻の船がスエズ運河周辺で待機していると明らかにした。237隻のうち107隻は紅海のスエズ港で、41隻は運河の中間にあるグレートビター湖で、89隻は地中海に面したエジプト・ポートサイドで立ち往生している。

海運専門紙ロイズリストのデータによると、運河の航行停止により、1日あたり推定96億ドル(約1兆522億円)相当の貨物が滞留している。1時間あたりでは4億ドル(約438億円)相当という。

大手海運会社のマースクとハパックロイドは、船の航行ルートを変更するか検討中という。

喜望峰を経由するルートに最初に変更したのは、エヴァーギヴン号の姉妹船エヴァーグリート号。いずれも台湾の長栄海運が運航している。

ロイズリスト編集長のリチャード・ミード氏はアフリカ大陸沖で海賊に狙われる可能性について、「確かに、数年前にソマリア沖で大きな海賊行為が発生したが、現在ではほぼ制御されている」とBBCに述べた。

「ギリシャ湾は発生のホットスポットになっているが、船舶は実際にはギニア湾の外側を航行するだろう」

(英語記事 Ships stuck in 'traffic jam' outside Suez Canal