自衛官を「歩」扱いする国家安全保障局


 国家安全保障会議には、外交・安全保障政策の基本方針を決定する首相、官房長官、外相、防衛相からなる「四大臣会合」、文民統制機能を維持する「九大臣会合」、重大な緊急事態に対処する「緊急事態大臣会合」があり、昨年12月4日に発足しました。そして、NSCを恒常的にサポートする事務局「国家安全保障局」(安保局)が1月7日、67人体制で設置されました。自衛隊OBで構成する「隊友会」が発行する『隊友』(3月15日付、4月15日付)によれば、メンバーの半数である33人が防衛省から、その内、自衛官が13人(将補1人、一佐6人、二佐6人)、文官が20人です。

 安保局は、局長が外交官出身、局次長が防衛官僚と外務官僚出身の2人、審議官が防衛官僚、外務官僚、自衛官の3人、その下に次に示す6個班(人員数は『隊友』から)があります。

(1)総括・調整班(19名、長:防衛官僚、自衛官2名)、局内の総括、NSCの事務を担当。
(2)政策第一班(8名、長:外務官僚、自衛官2名)、米国、欧州などを担当。
(3)政策第二班(8名、長:外務官僚、自衛官2名)、北東アジア、ロシアを担当。
(4)政策第三班(7名、長:防衛官僚、自衛官2名)、中東、アフリカなどを担当。
(5)戦略企画班(8名、長:防衛官僚、自衛官2名)、防衛計画の大綱などを担当。
(6)情報班(11名、長:警察官僚、自衛官2名)。

 メンバー67人の内、班長以上のポストが12人ですから、メンバーの半数を占める防衛省に局次長、審議官2人、班長3人の計6人を割り当てたのでしょう。ところが、この6ポストの内、5人が官僚、自衛官は1人にすぎません。外務省、警察庁は全て官僚ですから、班長以上12人中、「文官」11人に対して「武官」は1人だけです。全般のバランス上、自衛官5人を班長以上にし、かつ防衛省職員の33人の内、少なくても20人を自衛官にすべきだったのではないでしょうか。

 自衛官は防衛官僚や外務官僚や警察官僚の配下に置かれ、将棋の“歩”扱いです。海外派遣や災害派遣など緊張感の高い現場で任務に当たるのは自衛官、集団的自衛権が行使され戦死するのも自衛官、すなわち、種を蒔くのは自衛官、果実を味わうのは官僚、これは文民統制ではなく、官僚統制です。自衛官には現場を経験した適任者は沢山います。なぜ、遠ざけるのでしょうか。自衛官に不平、不満が鬱積、禍根を残すことになるでしょう。

特定秘密保護法も自衛隊だけを圧迫


 特定秘密保護法にいう「特定秘密」とは、特定秘密保護法で別表に掲げる(1)防衛に関する事項(2)外交に関する事項(3)特定有害活動の防止に関する事項(4)テロリズムの防止に関する事項――に関する情報であって、「公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」が指定されます。罰則は「特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする」などと定められています。

 外交、防衛に関して表現する場合の一般的順序は「外交、防衛」ですが、本法では「外交」よりも「防衛」を先に挙げています。また、我が国のマスコミは通常「警察、消防、自衛隊」の順序で扱いますが、本法においては外国並みに「警察」よりも「自衛隊(軍)」を先に挙げています。防衛を先にしたのは次の二つの理由から当然です。

 一つは、防衛省が保持する特定秘密は、防衛省以外の省庁が保持するものよりも国家安全保障上、極めて重要だからです。外国が侵攻してきた場合、自衛隊がどのような行動をとるのか、保持している装備の性能はどうか、防衛力をどのように整備するのか、武器、弾薬、航空機の研究開発状況など、中国などの外国は喉から手が出るほど欲しがっているでしょう。知る権利を優先させ、反日的あるいは国家意識欠如の国民や団体に知らせれば、直ちに外国にご注進となり、国の防衛が成り立たなくなります。

 二つは、特定秘密を取り扱う職員数は、防衛省が防衛省以外の省庁より極端に多いことです。特定秘密保護法によって指定される特定秘密は、現行の「特別管理秘密」に該当する情報から選ばれるでしょう。現在、政府が保持する特別管理秘密(防衛省の場合は「防衛秘密」)は約42万件あり、その内の9割が衛星写真、衛星写真以外の情報である暗号や装備品の性能など、ほとんどは防衛省が保持しています。これら防衛省の特別管理秘密がそのまま特定秘密に移行するでしょうが、防衛省以外の省庁では特別管理秘密を絞ったものになると思われます。

 従って、特定秘密を取り扱う職員は、防衛省以外の省庁では高級官僚や特定職域の職員に限定されますが、自衛隊では“下士官・兵”にも及びます。

 ちなみに特別管理秘密を取り扱う人数も朝日新聞(1月6日付)によれば、防衛省が約6万480人、外務省が2014人、警察庁が553人、内閣官房が519人、海上保安庁が310人、公安調査庁が154人、経済産業省が89人、総務省が22人、国土交通省が13人、宮内庁が4人で、防衛省が全体の94%余りを占め、外務省が3%、警察庁は1%以下に過ぎません。

 すなわち、この法律によって、最も制約を受けるのは、自衛隊員、特に自衛官なのです。にもかかわらず、自衛官の身になった議論は見当たりません。因みに、「自衛隊員」とは自衛官の他、事務次官、防大校長などの「文官」、防大の学生なども含みます。

 そして、最大の問題は特定秘密に対する国会議員の認識です。国家防衛のため、如何にして秘密の漏洩を防止するかよりも、「秘密指定の監視」「知る権利」「報道の自由」を優先させています。