防衛秘密のチェックは素人には無理


 「特定秘密保護法」国会審議の過程で、野党から特定秘密の指定の妥当性などを検証するための「第三者機関」を設置すべしとの意見がでて、内閣官房に「保全監視委員会」を、内閣府に「独立公文書管理監」、「情報保全監察室」を、有識者による「情報保全諮問会議」の設置をきめ、「情報保全諮問会議」はすでに活動を開始しました。これらとは別に、国会法を改正して国会内に「監視機関」を特定秘密保護法が施行される今年の12月までに設置する方向で検討がなされています。

 第三者機関には大きな問題があります。例えば、「防衛に関する事項」の特定秘密についていえば、これらの機関の委員である政治家、官僚、有識者などは、ほとんどが兵役の経験がなく、鉄砲にすら触れたこともなく、命を懸けて国家のために任務を遂行したことがない人たちです。どこが秘密になるのか判断できるとは思えません。

 自衛隊員ではない人たちの秘密保全意識は自衛隊員と比べて低いと思われ、漏洩する可能性が少なくないと思います。と言いますのは、自衛隊員は入隊すれば通常定年まで勤務し、国家に対する忠誠心があります。入隊に際し、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め」と「宣誓」しますが、警察官、海上保安官、検察官を含め一般の公務員は、このような文言の入った宣誓をしません、最高指揮官の首相、防衛大臣、同副大臣、政務官を含め政治家や民間人は「宣誓」すらしません。

「免責特権」とは「特権意識」なり


 第三者機関の中でも特に問題なのは、国会の「監視機関」でしょう。自公両党は、衆参両院に常設の「情報監視審査会」を設け、秘密指定の妥当性を監視し、必要があると判断した場合、強制力はないが政府に改善を勧告できるとする与党案を決めました。

 防衛省の特定秘密についていえば、政治家には秘密指定の妥当性の判断はできないでしょう。「反日的」議員もいます。彼らが職権を濫用して鬼の首でも取ったように何を言い出すか分かりません。

 何よりも問題なのは、監視機関構成員が特定秘密の提供を受け、それを漏らした場合の罰則が最長5年の懲役にすぎないことです。自衛官や公務員が漏らせば最長が10年ですから、国会議員も当然最長10年、否それ以上の罰則を科すべきです。政治家が支持者の会合や宴席で票目当てに「○○大臣は二つのことを知っていればいい」などと得意顔で国家の秘密をぺらぺらしゃべった場合は厳罰に処すべきが当然です。

 ところが驚くべきことに、森雅子同法案担当相は「憲法の免責特権は大変重い」(平成25年11月15日付朝日新聞夕刊)と答弁しています。日本維新の会も「監視機関の議員に守秘義務を課し、発言の自由を制限することは法制上、無理がある」(松野頼久国会議員団幹事長)(12月14日付産経新聞)と反発しました。

 安倍首相も今年の1月31日、衆院予算委員会で、「秘密漏えいについては、米国とドイツにおいては、例えば、議員に対する免責特権もこの秘密会においてはないということになっているわけであります。まあ、日本においては、それは憲法において保障されておりますから、そういうことにはならないわけであります」と、安倍首相にしては、原稿を見ながらの、回りくどい歯切れの悪い、理解するのに骨の折れる発言をしました。

 これらの発言は、憲法第五十一条「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」に基づくと思われますが、この条文は個人や団体の名誉、プライバシーなどを侵害した場合に当てはまるものであり、国家機密の垂れ流しには当てはまらないのは当然でしょう。我が国よりもはるかに国家意識、国防意識を保持していると思われるアメリカ、ドイツの政治家にすら、安倍首相の発言にあるように「免責特権」がないのです。

 軍人は世界共通です。特に同盟国においては絆が強く、自衛隊の一佐(外国軍の大佐相当)に米軍の中佐は敬礼します。自衛隊の二佐(中佐相当)は米軍の大佐に敬礼します。米軍は仲間意識から自衛官を信頼しています。それ故、外国の軍人は、政治家や官僚に教えない情報を自衛官には教えてくれるのです。大使館に防衛駐在官(大使館付武官)が必要なのはそのためです。

 しかし、国会議員に免責特権があると知れわたれば、自衛官に話した情報が国会議員から漏れることをおそれて情報を教えてくれなくなり、「特定秘密保護法」を作ったが故に、今まで以上に情報が入らなくなるという本末転倒の状況となります。

 自衛官や公務員は秘密を漏らせば厳罰で、自分たち政治家は漏らしても罪を免れるとの主張は、思い上がった「特権意識」ではないでしょうか。シビリアン・コントロールとか国民の代表とか、聞いて呆れる話です。国会議員が「免責特権」を根拠に国会の本会議や委員会で秘密を話しても刑事罰が科せられないのであれば、特定秘密を知らせてはならない国民は唯一、国会議員ということになります。