三菱樹脂事件の最高裁判例


 どちらの陣営であれ、新たな参加者たちに伝えたい線引きがあります。それは「政治活動の領域」と「過激派・公安監視対象団体に混同される領域」は明確に違うということです。私たち議員を含め、実際に政治活動を行っている大人たちは、この線引きを明確に意識しています。警察などの公権力も明確に区分していますし、就職活動に影響する民間企業も区分しています。この区分は、絶対に覚えてください。取り返しのつかないことになってしまいます。

 冒頭に述べた「ある最高裁判例」とは、「三菱樹脂事件」を指します。これは学生闘争に身を投じていたことを伏せて面接をパスした学生が、試用期間中に企業側に発覚したのです。結果、本採用されず、訴訟に発展しました。最高裁は「企業側の採用の自由」を認め、学生側が敗訴しています。
 
 ここで注意して頂きたいのですが、就活生であった原告は、政治活動を行っていたのでしょうか? つまり学生闘争を「政治活動」と呼んでいいのか、ということです。飛び交う火炎瓶、燃える警察車両、ついに突破される機動隊。現在、行動系と呼ばれる団体も、対になるカウンター勢も、まったくもって比較になりません。私は、「学生闘争」は「過激派・公安監視対象団体の領域」と分類し、政治活動とは切り分けて認識しています。この差は非常に大きい。政治活動を行っている大人たちは、それが保守であれ左派であれ、同じ認識かと思います。少なくとも公権力においても同様の扱いかと思います。新たな参加者たちにも、是非とも線引きをして欲しい点だ。

 政治活動であれば、就職に影響はないと述べました。あってはならぬという信念を持っています。しかし、「過激派・公安監視対象団体」と混同された場合には、影響が出てくると考えています。正しくは「影響が出た事例」があると言うべきでしょう。いま述べている三菱樹脂事件の最高裁判例がそれにあたります。実際に、面接をパスし、試用期間を経たにも関わらず本採用が見送られているのですから。そして、この民間企業の判断は、問題ないという判決となっています。

 この判決を「おかしい!」と責める者もいるでしょう。しかし、それを政治家に言っても仕方ない。実際に内定が取り消された等の状況に陥れば、それは政治分野ではなく司法分野の動きとなるためです。世の中には三権分立というものがあり、異なる権の者に言っても仕方がありません。

 採用の自由を認めた最高裁判例でありますが、学生側や一般の方の観点以外から考えるとわかりやすい。企業側から見れば、採用面接とは億単位の契約なのです。残念ながら終身雇用は崩れつつありますけど、定年まで務め上げた場合の賃金は億を超える。選ぶ側の企業からすれば、それは億単位の契約とも言えるのです。最終面接においては、社長・役員クラスが立ち会う例も多い。上場企業の役員級とは一日あたり数百万もの利益を上げる人材であり、当然凄まじく多忙な方々です。

 組織の維持、そして組織の利益のため、「新たな参加者」を企業側は必死に選ぶ。おかしな者を選んでしまえば、人事部門の沽券にも関わるだろう。最終面接に残し、社長・役員級の時間を割くことは許されない。人事部門も組織の一員であり、なにより仕事であるためだ。

 企業側にも「選ぶ自由」があるのです。それが最高裁の判断です。アベノミクスにより景気は回復を見せ、少なくとも就職戦線においてはかなりの改善を見せてはいます。しかし、まだまだ就活生側の売り手市場とは言えはしないでしょう。

 過激派・公安監視対象団体と目された場合には、仮に企業側が拒絶したとしても抗議することは難しい。試用期間に入っていた学生の本採用を見送っても違法性はないという判例が出ているからです。内定が取り消されたとしても、不思議ではないし同じく抗議は難しいだろう。本格的に抗議の意思表示を行うとは、それは訴訟を指しますが、基本的に敗訴するためです。

 最高裁判例の重みを説明します。Aさんが(甲)という行為をした場合、「あ」という判断が下されたとしよう。同じくBさんが(甲)という行為をした場合、「い」という判断が下されては不公平です。同じ(甲)という行為に対しては、同じ「あ」という結果が下されるべきだ。ゆえに訴訟においては過去の判例が重視されます。当然ながら、最高裁判例は最も重視されます。

 仮に「過激派・公安監視対象団体」と混同され、内定が取り消されたとしましょう。その場合は、最高裁判例が出ている以上、勝つことはほぼ不可能です。万が一、勝訴した場合は、最高裁の判例が覆った歴史的瞬間ということになる。トップニュースになるでしょう。

 万に一つの可能性を求め、この訴訟にチャレンジするのは自由ですが、凄まじく時間がかかることでしょう。最高裁判例を地裁・高裁でひっくり返すことは余り想像できないからです。企業側も最高裁判例を軸に戦うでしょうから、本当に勝訴するためには最高裁まで戦う必要があるからです。
 
 よって、「過激派・公安監視対象団体の領域」に入ってしまえば、就職活動には影響が出ます。それは司法分野の判断であり、民間企業はそのルールに則って動くためです。

 重視している点ですから、繰り返し強調しておきます。政治活動の範疇であれば、影響はないと断言したい。しかし、過激派・公安監視対象団体と混同された場合には影響がある。この両者は一見似ていますが、まったく異なるものである。