宮崎学が解き明かす山口組分裂の全真相

『宮崎学』

読了まで9分

宮崎学(作家、評論家)

分裂騒動勃発の理由


 まず認識しておくことは、暴力団に対する法規制が厳しくなって、法律だけでなく条例もどんどん出てきたということ。暴力団がちょっとなんかしたらパクられるという状態が現実的にありますよね。それら法律によってやくざが活動しにくくなってるのは確か。いままで通りにみかじめ料の集金に行ったら店までパクられた、ということになってきて、縄張りを持ち力を付けてそこで金を稼いでいくという従来型のやくざの活動が危うくなってきた。暴対条例が出来て規制に拍車がかかったのに伴い警察庁発表の構成員、準構成員を含むやくざにかかわる人数が大分少なくなった。基本的にはやくざやってても食っていけないということです。

 やくざの分裂騒ぎっていうのは抗争事件に発展するケースが多いんです。A組対B組という組がケンカするというのはもうない、A組が割れてA組1とA組2がケンカする。一番その形になったのが山一戦争です。山口組と住吉会がえいやーっで名乗り上げてけんかするっていう、そんなことはもうない。それをやると強化された暴対法などで、双方とも親分までパクられてしまう。使用者責任論で。そうして見ると今回も山口組の分裂ということですから、ある意味今風の分裂ではあるわけです。

宮崎学氏
 じゃ、なぜ分裂したのか。弘道会対山健組の対立がベースにあるとみるべきでしょう。出て行った人たちは反弘道会系の人たちでその旗頭が山健組。この対立は六代目体制寸前の五代目体制以降からの山口組の歴史に関係している。六代目体制が誕生するに当たり、山口組というのは関西の山健組がなんだかんだ言っても中心だった。人数は多いし、まして地元神戸だし、田岡さんの創設時から山健組というのは一番大きい組織です。神戸以外の組が親分になるってことにある意味ものすごい抵抗があった。それとその後の組運営の問題で弘道会と山健組はどんどん対立するようになって今回の事態になった。

 対立した中身は何か。いろいろ言われているように事務所を名古屋に持っていくとか、その他の日常的なやくざとしての活動、弘道会が進めることに関して面白くないという意見や不満がずいぶん山健組サイドからあったようだ。それがずーっと煮詰まってきてここで出たということではないか。やくざをウオッチングしていればわかることだが、どっかでピストル撃ったり、人が死ぬことが付きまとうのがやくざの分裂で、甘いものではない。分裂ということはイコール抗争なんですよ。今回もすでに1回ピストルが撃たれているし、弘道会と山健組の小競り合いも起こっていると聞いている。これはもっとエスカレートしていって銃撃を含む抗争になっていくだろうと思う。

なぜ、いま打って出たのか


 井上邦雄(山健組)さんたちはなぜいまここまで踏み込んだか。処分されたメンバーを見たら、年配の長老の人たちにとっては、弘道会系が進出してきてだんだん片隅に追いやられていく危機感もあったのだろうと思う。それはポジション上の危機感ではなくて、現実のやくざの活動をしている中でずいぶん出てきていたと思う。ある競技場でもっているダフ屋の利権をめぐり、今までは平和的に共存していたが、分裂騒動が勃発したあと一方の利権一色になってしまったと聞いている。この問題が起こってからそういうのが出始めている。斜めからみると、縄張り争いをやっているということになるじゃないですか。今までは共存してやれていた。これだけ感情的なもつれになってくると人数の多い方は少ない方をやっつけてしまおうとする。メンバーから見ても今回の分裂は、弘道会が山健組の主導権を握って進めてきたこの何年間かの歴史の中で、自分たちがちょっと窓際に追いやられた、けしからんことだという危機感をもった人たちが反旗を翻したという構造ではないか。

 金を稼いでくる力というのは、最近のことはよくわからない、どれだけ入ったのかも分からないんだけども、山口組の歴史の中で弘道会はこの間急激に伸びた。山健組はそういう点では歴史が古い。初代の山本健一さんが三代目の番頭さんだったんだから。弘道会がナンバーワン、ナンバー2の独占体制に入る過程で、いろいろな経済行為に進出していったという話を聞いている。それも繁華街のバーやキャバレーのおしぼり売って高い対価をもらって用心棒代の代わりにしてるとか、そういうのは昔からあったことなんだけど、そんなことじゃないビジネス。彼らは基本的に金を持っている。これは合法、非合法で稼いだ金だと思う。もっている単位が結構大きい訳です。だからその金を回すことによって結構稼いでいるんじゃないですか。山口組のナンバーワン、ナンバー2を握ったら、それだけオファーもあるとみていいじんじゃないでしょうかね。

 弘道会に限らず、東京の方のやくざも同じような形で金は稼いでいるんであって、弘道会が特別にそういう稼ぎ方をしているとは限らない。暴対法が出来て金を稼ぐのが難しくなっているから、極めて合法的に稼がなきゃいけなくなってきている。そういう一連の流れの中で、やくざの稼ぐシステムが大分変わってきていることは確かでしょう。しのぎは間違いなく東京が一番大きいが、あえて名古屋と大阪を比較したらパイとしては大阪の方が大きいのではないか。これから稼げる金がどちらが大きいか、ということで比較したら間違う。どちらの方がいま持っている金があるかということだろう。ただ、名古屋は金を持っているという噂は随分前から言われていることなんだけど。あそこまで伸びてくるということはある程度持ってるということなのでは。

山一抗争のようになるのか


 6:4の確率で進展していくように思われる。山口組系のやくざにとってのポリシーみたいなものがやはりあって、分裂イコール抗争なんです。まったくのイコール。分裂ということは敵が出来た、そいつら生かしておいてはいけないと両方とも思ってますよ。ピストルなどの銃撃戦とか、そういうことも考えてるんじゃないですか。山健組の歴史イコール山口組の歴史なんです。山口組の歴史の中で山健組が中心的な役割を果たしてきたのは確かです。弘道会が山口組の表舞台に登場したのはここ十数年の話。山口組の100年近い歴史があり、特に三代目、田岡さん以降は。山口組の歴史は山健組の歴史だったと言えると思う。山口組はおれたちが支えてきたんだ、という意識はものすごくありますよ、山健組の人たちは。メンタルのところで今回の騒動に影響している。「神戸山口組」という名称を使うとか使わないとか、あえて神戸と表現しているわけで名古屋ではないよという心ですよね。そういう点で神戸と山口組の歴史は自分たちが担ってきたんだという、神戸=山健組ですから、かれらの発想は。

 篠田建市組長が6代目に就任した2005年以降、弘道会の影響力が強まったというのは山健組の影響力を落とし、敵をつくりながら影響力を高めてきた。パイの小さい中で弘道会が勢力を伸ばしてきたことは事実で、そのあおりを実体的にも精神的にも、山健組がプレッシャーを受け続けたというのも事実だろう。で、そろそろ限界に近くなってきたと考えたんではないか。大阪、神戸は警察が警戒していますね、今回の件で衝突が起きるのではないかと。全国に通達も出ています。だから、大阪、神戸ではむしろ衝突は起こりにくいんでは。むしろ岡山、京都とか、ちょっと離れたところでそれぞれの勢力がいるところ。そしてそれは起こらないですむということはないです、間違いなく。井上さんたちが旗揚げして、さあ今後は仲良くやりましょう、ということが通る世界ではないですから。お互いが不倶戴天の敵。どっかで衝突する可能性がどんどん高まっている。山一抗争のときとは今は背景が全く違います。山一抗争のときは暴対法も暴排条例もなく、権力が強引に介入して潰すということが出来なかった。いまは権力が介入しようと思えば幾らでも出来る時代です。

(聞き手 iRONNA編集部 溝川好男)

この記事の関連テーマ

タグ

山口組「仁義なき分裂」の真相

このテーマを見る