日本でもしかれ始めた強固な包囲網


 一方、SSへの逆風はさらに強まっている。今年、相次いで特別出費を余儀なくされているのだ。

 6月、米国で日本側が訴えた捕鯨妨害関連訴訟で、日本側に255万ドル(3億1千万円)を支払うことで合意した。さらに、9月には、南極海でSS妨害船が沈没した事件にからみ、ワトソン容疑者が故意に船を沈めたとして、SS側が船の元オーナーに50万ドルを支払う司法判断が下された。

 9月1日、和歌山県太地町で解禁されたイルカ漁の妨害のため、今年もSSは多数の活動家を現地に派遣しようとした。しかし、日本政府は事前に2人のリーダー格を入国拒否にする措置をとった。効果はてきめんだった。太地町でのSSは勢力が弱まった。

 デンマークと同様、日本でも強固なSS包囲網がしかれ、団体はかつてのように日本を標的にして寄付金を稼ぐビジネスモデルが発揮できないでいる。

 ワトソン容疑者の移動が制限されたことによる寄付金収入の先細り、そして、度重なる訴訟費用増大による特別出費は、SSの手足を奪っている。団体の扇の要であるワトソン容疑者がどんなに訴えようとも、彼はフランス国内から一歩も外に出られないでいるのである。

 6月、ワトソン容疑者は自らの国際指名手配について声明を出し、自らに対する赤手配は「政治的な動機で出されたいんちきでばかげた嫌疑によるものだ」と訴えた。そうして、こんな強がりを言った。

 「私は誰も傷つけず、どんな私有財産に対しても損害を与えていないのに、軽い罪でICPOのレッドリストに掲載されている歴史上唯一の人間である。日本は、私を排除し、孤立化させることで、さらには世界中を飛び回ることを不可能にさせることで、シー・シェパードの行動を止めることができると考えているようだ」

 そんなことはまかり通らない、ワトソン容疑者はそう強調した。むしろ、国際指名手配がなされたことで、シー・シェパードはかつてないほど強靱な力を得たのだ、と強調してみせた。

「日本政府が私に対してどんな圧力をかけようとも、シー・シェパードがダメージを受けることはないだろう。もし今日、私は死んだとしても、シー・シェパードは続き、さらに強くなるだろう。その理由はたった1つ。われわれの海で起こっている現実が、シー・シェパードの支持をよりいっそう増大させていることにつなげているのだ」

もはや「負け犬の遠吠え」か


 シー・シェパードの団体名は直訳すれば、「海の番犬」を意味する。センチメンタルなワトソン容疑者の主張はもはや彼が追い詰められていることを物語る。大言壮語的なワトソン容疑者の口調を借りるなら、「負け犬の遠吠え」のようにも響く。

 フランス政府もワトソン容疑者の庇護にメリットを見いだせなくなったとき、態度を180度変える可能性もあるだろう。オランド政権が選挙で負けて交代すれば、SSに対する風向きもまた変わってくるだろう。そのとき、彼はどこに向かうのだろうか? 

 SSが基盤を置くオーストラリアでも労働党政権から自由党政権に変わり、SSへの逆風が強まったと言われている。豪捜査当局は日本の治安当局に協力的になった。

 これまで日本側はシー・シェパードに対して打つ手なしの状況が続いていた。しかし、盛り返し、いよいよチェックメイトの形が見えてきたようだ。

 日本の治安当局は、彼を裁判にかけるタイミングを虎視眈々と狙っている。

 今冬、日本は南極海で調査捕鯨を再開させる。そのとき、SSがどんな手をうってくるのか、注目される。

 しかし、ワトソン容疑者のいない捕鯨妨害など、恐れるに足りず。海の番犬たちは策を誤り、墓穴を掘る可能性もあるだろう。