パトロンを取るか、用心棒を取るか

 朴大統領は、今回の訪中で中朝に楔を打ち込み、習政権の取り込みに成功したと自画自賛している。たしかに中国は西側首脳として唯一出席した朴大統領を熱烈歓迎し、厚遇した。皇帝色でもある黄色のジャケットを着て天安門に現れ、習主席、プーチン大統領と並び立ったことで朴大統領はさぞかし「女帝」のような気分になったかもしれない。帰国後、北朝鮮とのチキンレースでの毅然とした対応や訪中が評価され、支持率も急上昇し、1年5カ月ぶりに「セウォル号沈没事故」前の50%台を回復したことで、いまは幸福の絶頂にあるといっても過言ではない。しかし、前途は多難だ。いつ国民から再びバッシングを受け、支持率が急落するかもしれない状況に置かれていることには変わりがない。

 難題の一つは、10月16日に予定されている訪米で、北京の式典出席をめぐって生じたオバマ政権との不協和音を解消し、米韓関係を強化できるかどうかだ。

 朴大統領は一応、米国への配慮から訪中発表より先に10月の訪米を発表した。また、習主席との首脳会談で北朝鮮の核放棄を定めた6カ国協議共同声明と国連安保理決議の忠実な履行の確約を取り付け、10月10日の労働党創建70周年記念日に合わせて予想される北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射についても「反対する」ことで意見の一致も見た。さらに、米国が強く求めていた日韓首脳会談にもメドを付けた。

 北朝鮮問題を外交的に解決するうえで中国との連携は不可欠だが、中国とは異なり、韓国と相互安全保障条約を結び、米軍を駐屯させている米国としては、米韓および日米韓3カ国の安保協力の強化こそが先決だ。米国が韓国に高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備を迫る理由もそこにある。

 北朝鮮は再三にわたって「ホワイトハウスもペンタゴンもわれわれの攻撃の照準にある」「米国を墓場にする」と恫喝している。金第1書記も今年7月27日の停戦記念日での演説で「もはや米国はわれわれにとっては脅威でも恐怖の対象でもない。むしろ、われわれのほうが米国への大きな脅威、恐怖になっているのが今日の現実である」と豪語している。事実なら、北朝鮮の核ミサイルは米国にとって深刻な脅威であり、米本土防衛のためTHAADの韓国配備を急がなければならない。

 しかしTHAAD韓国配備については、ウクライナやシリアの問題で米国と対峙するロシアに続いて中国も反対し、朴政権に配備しないよう釘を刺している。仮に中国の意向を無視して配備すれば、経済制裁という「報復」を食らうかもしれない。朴政権は、その時になって中国が「韓国カード」を使って北朝鮮を牽制し、その一方で「北朝鮮カード」を使ってTHAADの韓国配備を牽制する、そのしたたかさを痛感することになるだろう。

 米国内では、韓国が過度に中国に傾斜しているとの批判が台頭し、韓国に冷淡になりつつある。オバマ政権は、米国主導のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に加わらないばかりか、米国が敬遠している中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にいち早く参加し、副総裁のポストまで要求している韓国の背信を苦々しく思っている。そこへ、いまや米国の安保に喫緊のTHAAD配備に同盟国である韓国が同意しないとなると、韓国への不信が一段と高まることになるだろう。

 経済を中国に、安保を米国に依存する韓国からすれば、中国はパトロンで、米国が用心棒のような存在だ。パトロンを取るのか、用心棒を取るのか、朴政権は訪米で重大な岐路に立たされるかもしれない。