3カ国首脳会談の目的は歴史認識問題に対する追及

 冷却化した日韓関係の修復も朴大統領に課せられた難題の一つである。

 朴大統領は、式典と軍事パレードへの出席の見返りとして習主席から早ければ10月末、遅くとも11月中に日中韓首脳会談を開催することで同意を取り付けた。

 朴大統領が三カ国首脳会談に積極的なのは、仲違いしている世界第2位の経済大国・中国と3位の日本のあいだを取り持つことでホスト国・韓国の国際的地位を高めることにある。また、北朝鮮の核問題で3カ国が足並みを揃え、北朝鮮に圧力を掛けることも狙いの一つだ。そして何よりも歴史認識の問題で中国と協調し、安倍総理に対して戦後70年談話で触れた歴代内閣の歴史認識を確実に継承し、行動で示すよう促すことにも狙いが隠されている。

 歴史認識の問題は、今回の中韓首脳会談ではほとんど言及されなかった。しかし、朴大統領は8月15日の日本の植民地支配からの解放を祝う「光復節」70周年の演説で、安倍晋三総理の戦後70年談話に触れ「残念な部分が少なくない」と批判した。
3カ国首脳会談を前に、握手を交わす(左から)安倍晋三首相、韓国の朴槿恵大統領、中国の李克強首相=11月1日、韓国・ソウルの青瓦台(共同)
3カ国首脳会談を前に、握手を交わす(左から)安倍晋三首相、韓国の朴槿恵大統領、中国の李克強首相=11月1日、韓国・ソウルの青瓦台(共同)
 中国も華春瑩・副報道局長が談話を発表し、「日本は、あの軍国主義侵略戦争の性質と責任に対してはっきりかつ明確な説明を行ない、被害国国民に真摯なお詫びを行ない、重大な原則的問題でごまかしを行なってはいけない」と反発した。それでも中韓とも日本との首脳会談開催に前向きになったのは、談話に一応「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「お詫び」の4つの「キーワード」が書き入れられたことにもよるが、首脳会談の席で安倍政権に「痛切な反省」と「お詫び」を行動で示すよう圧力を掛けることにある。そのことは、尹炳世外相が岸田文雄外相から談話について電話で説明を受けた際「日本政府の誠意ある行動が何よりも重要だ」と応じたことからも明らかだ。

 朴大統領は中国滞在中、『人民日報』(9月4日付)との書面インタビューで「歴史は悠久に流れ永遠に残るものであり、それを認めまいとするのは掌で天を隠そうとする行為にほかならず、自身の能力に対する過大評価」と遠回しの表現ながら安倍総理を批判していた。さらに「現在、北東アジアで起きている各種の軋轢と対立を平和と協力の秩序に戻すためには、領域内国家間の正しい歴史認識に基づき新たな未来に進もうとする共同の努力が必要だ」と述べたことから、日中韓3カ国首脳会談で歴史認識問題を持ち出す可能性はきわめて高い。しかし、その一方で、日韓関係が長期間にわたって冷却したことで日本からの観光客の減少や日本企業の韓国への投資の鈍化、日本国内における韓流ブームの衰退、ヘイトスピーチの台頭などの弊害が生じたことで日韓関係を早急に立て直す必要性にも迫られている。

 朴大統領は日中韓首脳会談の流れのなかで、安倍総理との初の日韓首脳会談に応じることになるが、その前に急を要して解決しなければならない問題がある。日韓関係の最大のネックとなっている従軍慰安婦の問題である。

 日韓は昨年4月から今年9月まで慰安婦問題などを話し合う局長級協議を9回行なってきたが、依然として隔たりが大きい。韓国国内では、6月11日に東京で行なわれた8度目の協議の翌日、朴大統領が『ワシントン・ポスト』とのインタビューで「韓日のあいだでそうとうな進展があった。交渉は最終段階にある」と発言したことで期待感が高まった。

 韓国側の情報によれば、これまでの交渉で韓国は日本政府が法的責任を認め、安倍総理が謝罪し、謝罪の手紙を駐韓日本大使が慰安婦らに直接手渡し、慰労金を政府の予算から拠出させるよう求めているのに対して、日本は従軍慰安婦問題が最終的に解決、決着したことを韓国政府として担保する、解決した証しとして、日本大使館の前に設置されている慰安婦少女像や慰安婦の碑を撤去することなどを求めているとされている。

 日本は慰労金を政府が拠出することは国家の関与、法的責任を認めることとして依然として難色を示しており、韓国もまた日本が提示した条件を「これでは、プラスアルファでなく、マイナスアルファだ」として反発していると伝えられている。

 韓国メディアは、安倍総理の70年談話についてこぞって批判的だ。それは、記事の見出しを見れば一目瞭然だ。聯合通信は「安倍談話、村山・小泉談話より後退」、『ソウル新聞』は「既存の談話を引用、形式的に言及」、『韓国日報』は「真実味がない」、『朝鮮日報』は「反省、謝罪しない談話」、『韓国経済新聞』は「過去形の談話」といずれも手厳しい。慰安婦問題で安倍政権から善処を取り付けられなければ、朴政権はマスコミや野党から叩かれることになりかねない。

 日本とは経済優先か、それとも過去の問題か、朴大統領はこれまた板挟みになっている。どうやら朴大統領を生かすも、殺すも、安倍総理の手中にあるのは間違いないようだ。