さて、暴力団の話に話を戻そう。米国がテロリストと指定し金融制裁の対象になった人や組織のリストを公開しているわけである。これを「SDNリスト」と呼ぶ。そして、米国は2011年7月「YAKUZA」という暴力団の総称と一部指定暴力団の幹部及び、その関連団体をこのリストに入れた。

 そして、米国政府は徐々にその対象を拡大していった。2012年 六代目山口組と組長である篠田建市(通称司忍)など幹部2名をSDNリストにいれ、2013年にこれを拡大、そして、2015年4月21日 米国は六代目山口組組長の出身母体である山口組弘道会と竹内照明会長をSDNリストに入れた。つまり、六代目山口組とその幹部はテロ組織とテロリスト扱いになったわけである。ちなみに「住吉会」と「稲川会」もこのリストに掲載されている。

 つまり、この段階で六代目山口組は国際的にはテロ組織であり、幹部はテロの主導者と同じ扱いになったわけである。これを受けて、日本政府としては早急な対応を行うことが急務になった。米国のSDNリスト掲載に掲載されることは国際テロリスト指定と同義であり、これを国内で放置しておけば国際的批難を浴びるからである。

 しかし、日本は民主党政権の政治的混乱と東日本大震災による影響などからこれに対処できない状況が続いており、同時に法整備も著しく遅れていたわけである。そのため、日本の対応が国際社会から批判を受ける状況になりつつあったのであった。これを受けて、昨年11月日本政府が作った法律が先程述べたテロ組織などへの資金提供を禁じ、資産を凍結没収出来るテロ三法であり、この法律ができたことにより、警察当局としても動きやすい環境が出来たといえる。

 そして、今回の暴力団壊滅作戦が始まったわけである。現在その中心となっているのは銀行口座の取得や不正利用であり、詐欺や本人確認法違反などにより暴力団の幹部が続々と検挙されているのである。そして、銀行口座を洗い出すことによる新たな検挙も始まっている。銀行口座には金の流れが記録されており、それだけで証拠になる。銀行口座にお金がある=何らかの所得があることを意味し、確定申告などによりきちんと納税されているかが次の焦点になるわけである。これで検挙されたのが工藤会総裁であり、下部団体からの上納金の一部を個人の所得とみなし脱税で検挙したわけである。

 暴力団というのはピラミッド構造であり、暴力団員→三次団体→二次団体→一次団体という形で上納金が上がってゆく仕組みになっている。当然、一次団体に税務調査が入れば、その反面調査として二次団体や三次団体に税務調査が進むことになる。そして、暴力団フロント企業や関連企業の実体も暴かれることになるわけである。そして、暴かれると銀行口座が凍結され、資金が没収される事態になってしまうのである。

 暴力団も、金がなければ何も出来ない。抗争にはお金がかかり、組の維持にもお金がかかる。当然、その構成員である暴力団員にも家族があり生活がある。この一連の捜査は、暴力団の金を止めることを目的にしており、「現代版兵糧攻め」といえるものなのである。

 そして、日本最大の組織である六代目山口組を崩壊に導くことができれば、日本政府の国際的なメンツも立つ、このような情況の中で、今回の六代目山口組分裂は起きたわけである。その理由には、もともとの母体である神戸と六代目の出身である名古屋の争いもあるが、金の問題も大きいと言われている。暴力団二次団体、三次団体の多くが本部が求めてきた上納金を払えなくなりつつあるのだ。そして、これを考慮し分裂先である神戸山口組は、上納金を大きく下げる決断をしたと言われている。
 
 また、今回のパリでのテロ事件を受けて、国際連携でのテロ取り締まりの強化とテロリストの監視強化と迅速化が決議され声明として出された。これにより、これまで以上の速度で、国際的にはテロ組織とされる暴力団の取り締まりは一層厳しくなるだろう。特に2つの山口組は分裂による抗争が懸念されており、警察庁の警戒最重点対象になっており、警察は威信をかけて、撲滅を進めることになるのだろう。