モーニング娘。からAKB48へ


 ここで、話は1970〜80年代のアイドル黄金時代をワープして一気に21世紀に飛ぶ。まずは20世紀末に、モーニング娘。の大ブレイクが起きた。

 モーニング娘。は、1997年に『ASAYAN』(テレビ東京系列)という番組内の「シャ乱Qロックボーカリストオーディション」の決勝で敗れた5人が、敗者復活的温情で結成されたグループで、当初の期待度は低かったが、番組内で彼女たちの奮闘ぶりをドキュメント的に紹介することで人気が上昇し、1999年の「LOVEマシーン」の大ヒットで国民的アイドルグループへと登りつめた。

 新メンバーが加入したり、旧メンバーが卒業したりと、組織内の新陳代謝を活発におこない、2015年現在、第12期メンバーで活動を続けている。

「AKB48 22ndシングル選抜総選挙」を終えて、にこやかに談笑する前田敦子(左)と大島優子=2011年6月9日、日本武道館(撮影・大橋純人)
 このモーニング娘。ブームの勢いにのって、2005年にAKB48がデビューした。その名の通り、東京の秋葉原を拠点にした大所帯のアイドル集団である。現在のメンバーは100名をはるかに超え48というのは実体というより象徴的数字である。名古屋にSKE48、大阪にNMB48、博多にHKT48と拡大し、さらには、海外の上海、ジャカルタにも48システムが展開している。

 狙いとしては、ジャニーズや宝塚と同じで、容姿やキャラクターにおいてさまざまなタイプの女の子がいることで、ファンからすれば、多くのメンバーから自分好みを見つけられ、なおかつ、自分が目をつけた「原石」が人気アイドルに成長していくことを見守れるのである。

 つまりは、一人のビックアイドルに頼るのではなく、「多様な選択肢」を用意して、後はファンの好みに委ねるというやり方である。マーケテイング的言葉に置き換えると、消費行動における「少品種大量生産」から「多品種少量生産」へという流れである。

日本型育成感覚モデル


 宝塚を源流に持つ、多くの選択肢から自分好みのアイドルを見つけ出すというシステムは、ある意味、日本的な「育成感覚」モデルである。ハリウッドに典型的な、欧米のショービジネスでは、歌唱力やダンスの実力があるのは当然の条件で、その上で、自分の商品価値を映画会社なりに売り込み使ってもらう。その契約を代行するのが「エージェント」である。

 これに対して、日本の芸能事務所は、「原石」となるべき素材を見つけ出し、そのタレントが実力をつけていくのをサポートしていく。ファンたちも、デビュー時に未熟でも、温かい目で成長を見守ってくれる。だから、歌やダンスの技術が低くても、なんらかの「華」や「人間的魅力」があれば、人気が出ていくことがある。

 よく、海外からの留学生が、日本のアイドル(の一部ではあるが)、なんで、あんなに歌が下手なんですかと驚いたりするが、日本では、それこそ、自分の子どもが学芸会で頑張っているのを応援するように、成長過程そのものが「商品」になるのである。

 ファンが「アイドルを育成していく」という「参加感」を共有するというのは、最終的には「幻想」であるかもしれないが、ある意味、相互補完的な「インタラクティブなメディア行動」であり、欧米型の、一方向的な「実力至上主義」とは異なるビジネスモデルと言えるのである。