モノのインターネットの通信は金にならない


 MVNOがNTTドコモに支払う、Xi(LTE)サービスの2014年度の接続料(レイヤー2)は、10Mbpsという帯域について月額94万5059円だ。それを超えると、1.0Mbpsごとに9万4505円増加する。この料金は、総務省のガイドラインに従って毎年見直されており、2008年度は10Mbpsで月額1267万円だったので、6年で92.5%もの値下げが行われたことになる。もちろん、スマホ向けの格安SIMを提供するMVNOにとっては、10Mbpsという帯域ではビジネスにならない。その数倍、数十倍の帯域を調達して、多くの顧客を獲得しなければならない。

 それに対しIoT端末は、通信するデータ量が小さく、そのスピードも遅くて構わないケースが多い。また、通信の時間をうまく分散できれば、それほどの帯域は必要ない。

 例えば、128kbpsの低速で、1回の通信で50文字(半角)のテキストデータ、例えばGPSによる位置情報などをクラウドに送信するIoT端末を考えてみる。単純に10Mbpsを128kbpsで割れば、同時に78台のIoT端末が128kbpsで接続可能だ。128kbpsで50文字(400ビット)を送信する時間は1/320秒なので、1秒を320台で分割すれば合計25000台のIoT端末が通信することができる。さらに乱暴な計算を続けると、それぞれの端末が1分間に1回の頻度で通信する必要があるケースであれば、10Mbpsの帯域で150万台のIoT端末に通信サービスが提供できることになる。

 MVNOは携帯キャリアから通信を帯域という単位で調達するが、SIMのエンドユーザーには、例えば「月に5Gバイトまでの通信ができるサービスが2000円」というようにデータ量で販売する。5Gバイトを超えると通信ができなくなるのではなく速度が非常に遅くなる。しかし、MVNOがどのくらいの帯域を調達して、どれだけのSIMを販売しているかは明らかになっていないので、5Gバイトまでの高速データ通信が保障されている訳ではない。効率よく帯域を使って、価格と品質のバランスをとることがMVNOの格安SIMビジネスのポイントになる。そこに価格以外の付加価値は見えない。

 上のような(乱暴な計算の)例の場合、100万円程度で調達した通信を150万台のIoT端末向けに販売するならば、その調達価格は1台あたり月額1円にも満たない。MVNO事業には通信交換機や課金・認証などの初期投資だけでも数億円かかる設備を保有し、さらに運用や保守も自社で行う必要がある。これまでのMVNOの形態では、モノのインターネットのためのモバイル通信サービスを提供することは難しい。