感情市場を今一度認識しなければならない


 こうした明らかなヘイト発言が言論の自由として対処されないためには、法や企業の基準だけでなく、我々の感情と理性による価値への合意形成が必要となる。その時、我々は理性を使用しながらも、感情的な言説に意識的、無意識的に(少なくとも瞬間的には)反応してしまうことを理解しなければならない。さらに厄介なことに、ネイティブ広告もヘイトコメントも、ネットの発達とともにより容易にその内容の伝播を可能にする。

 我々は我々自身が感情的な生き物であることを改めて認識しなければならない。そしてその際、「我々がより理性的になればいい」といった類の紋切り型の言説を繰り返すだけでは不十分である。感情には感情。ないしは感情があらゆる空間においてキーポイントであることを踏まえた上で制度設計をしなければならないのだ。こうした視点は以前もこの連載で取り上げた(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4508)

 本稿は事実の主として確認に多くの紙面を割いてしまった。これらの問題から、ネット上における我々の感情とその設計を論じるために、稿を改めてこの問題について広く考察したい。

つかごし・けんじ 学習院大学非常勤講師。1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』月曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中。