2004年、タレントの李丞涓が慰安婦を題材とした自らのヌード写真集の制作を行ったことから、元慰安婦を支援する市民団体から「苦痛を受けた」と非難され、写真集の販売を中断、ナヌムの家(元慰安婦女性が生活する施設)を訪問して元慰安婦女性に謝罪し、芸能活動を中断するという事件が起こっている。2012年4月、お笑いタレントの金(キム)グラがインターネットラジオ放送で「娼婦たちが貸し切りバス2台に分かれて乗っているのを見て、過去の従軍慰安婦を見ているようだった」と述べたことが明らかになり、一時、すべての放送から降板するという事件が起こっている(その後、元慰安婦女性への謝罪・奉仕活動を経て、芸能界に復帰)。

 李丞涓のケースはどう見ても元慰安婦女性を商業的に利用しようとするものであったし、金グラのケースは元慰安婦女性ばかりか性風俗に従事する女性までをも貶める暴言であったから、批判の対象になるのは当たり前であった。しかし、事件の当事者が一時的にせよ恒久的にせよ、芸能活動を中断することを余儀なくされ、元慰安婦女性に対する直接的な謝罪がなされるまで糾弾と批判がやまなかったことは、韓国においてこの従軍慰安婦問題がどのように認識されているかを端的にあらわしていると言えよう。

 また、ソウル大学校の李栄薫教授は2004年9月に行われた韓国のテレビ討論番組で「朝鮮戦争当時、韓国人による慰安所や米軍部隊近くのテキサス村(風俗街-引用者)に対する韓国人の反省と省察がない」、「朝鮮総督府が強制的に慰安婦を動員した事実はない」、「日本は挺身隊を管理した責任があるが、韓国民間人の問題も取り上げるべきだ」という趣旨の主張を行い、これが騒動となった。李教授の発言の後、韓国挺身隊問題対策協議会は「李教授の発言は日本の右翼の中でも極右からやっと出てくる主張で、私たちを驚愕と怒りに震えさせる」という声明を出し、李教授の辞職を要求した。李教授は辞職に追い込まれることはなく、告訴されることもなかったが、元慰安婦女性の前で土下座して謝罪と釈明を行わざるを得なかった。

 言うまでもないことであるが、李教授は「日本の右翼(極右)」などではない。李教授の著書を読めば分かるように、李教授は朝鮮に対する日本の植民地支配を肯定しているわけでもないし、従軍慰安婦問題において日本を免責しているわけでもない。「日本の右翼(極右)」ならば、間違っても著書にそうしたことを書かないだろう。しかし、従軍慰安婦問題に対して、元慰安婦女性や支援団体の意に染まない発言をした場合、容易に「日本の右翼(極右)=売国奴」と認定され、糾弾の対象となるということは認識しておく必要がある。