不正競争防止法で保護される「営業秘密」とは


 事業上有用な情報のうち特許法の保護対象足りえない技術情報、特許法の保護対象であっても戦略的に秘匿化した技術情報、そもそも特許法の保護対象になることのない営業情報については、不正競争防止法による保護の余地がある。

 そもそも不正競争防止法は、その名のとおり、事業者間の公正な競争を確保し国民経済の発展に寄与することを目的とする法律であるが、独占禁止法のように法の執行が行政機関に委ねられておらず、不正競争行為の被害者である事業者に差止請求権及び損害賠償請求権を付与することにより、当該事業者の自助努力によって法目的を達成するという制度を採用している。

 この結果、不正競争防止法には事業者の利益を保護する機能が伴うことになり、近年においては、むしろ特定の事業者の利益を保護する法律としての機能が強調され、知的財産法の一つとして理解されるにいたっている。

 また、不正競争防止法は、差止請求、損害賠償請求といった民事的救済のみならず、不正競争行為を行った者については10年以下の懲役、最高3000万円の罰金、行為者が帰属する企業については、従業者が行った一定の不正競争行為につき最高10億円の罰金を含む罰則規定が設けられており、不正競争防止法によって保護される技術情報あるいは営業情報を不正に取得、使用等を行った場合には行為者、その者が帰属する企業のいずれに対しても重い刑事罰が加えられることになっている。

 ところで、不正競争防止法によって保護される事業上有用な情報は「営業秘密」と定義され、同法においては、「秘密として管理されている生産方法、販売方法、その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。」と規定されている。すなわち、事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、(1)秘密管理性及び(2)非公知性を備えた情報のみが不正競争防止法によって保護されることになる。

 近時の裁判例において、非公知性が認められたものの秘密管理性が否定されたものは存在するが、秘密管理性が肯定されているにもかかわらず非公知性が否定されたものは存在しない。このことから、裁判において「営業秘密」との認定を得るにあたり秘密管理性の主張・立証が非常に重要であることが理解できる。

 さらに、裁判において、秘密管理性の要件を認定してもらうにあたり、営業秘密にアクセスできる者が制限されているか、営業秘密に対するアクセス制限が加えられているか、あるいは秘密であることの表示がされているか、就業規則又は契約により秘密保持義務が課されているかという事実関係が非常に重要になる。

 なお、裁判所における秘密管理性の要件の認定が厳格に過ぎるという意見が多く寄せられているところであり、経済産業省において秘密管理性の要件を緩和する指針(当該指針は、行政権の一機関である経済産業省の考えを示すものであり、司法権を司る裁判所がこれに拘束されるものではない)が出されている。