しかし、秘密管理性の要件は、営業秘密に関する不正競争行為該当性の分水嶺となる要件であり、不正競争防止法においては前記したとおり刑罰規定が存在し、刑罰が科されるか否かの判断においても秘密管理性の要件該当性が問題となることを考慮した場合、秘密管理性の要件を野放図に拡大させると、刑罰規定の明確性を損なうことになるため問題であると考えている。

 仮に、秘密管理性の要件を緩和するという考え方を採用した場合には、他の要件において犯罪行為に該当するか否かのメルクマールを追加し、予測困難な処罰対象の拡大を防止する必要があるが、前記した秘密管理性の要件と非公知性の要件との相対関係を前提とする限り、営業秘密に該当する事業上有用な情報に限定を加える方法により、これを防止せざるを得ないと考えている。

 しかし、営業秘密に該当する事業上有用な情報に限定を加えた場合、不正競争防止法の保護対象が硬直化し、不正競争防止法の特許法補完機能を大きく減退させるという結果を招来しかねない。

 筆者としては、事業者の意識改革により裁判所が求める水準の秘密管理体制を構築することは困難ではないと考えており、事業上有用な情報に限定を加えて不正競争防止法の特許法補完機能を減退させるのではなく、秘密管理性の要件の認定基準を維持した上で営業秘密に対する事業者の意識改革を積極的に行っていくことでこれをクリアーしていくべきと考えている。

何が不正競争行為にあたるのか


 不正競争防止法が定める営業秘密に関する不正競争行為の類型は、まず、保有者から情報を取得するにあたり、不正取得したものか、契約、雇用関係等に基づき正当に取得したものかで区別されている。

 そして、情報の入手が不正である場合、情報を取得する行為、使用する行為、開示する行為のいずれもが不正競争行為とされ、不正取得であることを知って(知らないことに重過失がある場合も含む)、不正取得者から情報を取得する行為、使用する行為、開示する行為のいずれについても不正競争行為とされている。他方、情報が不正取得されたものであるということにつき重過失なく知らない場合については、情報を取得した後に不正取得された情報であることを知って使用、開示する行為がいずれも不正競争行為とされている。

 情報の入手そのものは契約、雇用関係等に基づき行われている場合については、自らの利益を図る目的あるいは情報保有者を害する目的で情報を使用、開示する行為が不正競争行為とされ、正当な情報取得者が上記した目的で情報を開示したことを知って(知らないことに重過失がある場合も含む。)情報を取得する行為、使用する行為、開示する行為のいずれについても不正競争行為とされている。他方、正当な情報取得者が前記した目的で情報を開示したことにつき重過失なく知らない場合については、情報を取得した後にこれを知って使用、開示する行為がいずれも不正競争行為とされている。

 以上に示した不正競争行為を図で示すと以下のとおりとなる。