度重なる法改正で重い刑罰に


 平成2年の改正により営業秘密の民事上の保護規定が設けられ、営業秘密に関する不正競争行為を行った者に対する差止請求、損害賠償請求が認められた。また、平成15年改正により営業秘密侵害罪が設けられ、最高懲役3年、罰金300万円の刑罰が科されることになった。

 その後の営業秘密に関する不正競争防止法の改正は、実体法的には、平成27年改正において差止請求権の除斥期間(権利行使が可能な期間)が伸長されたことを除き、専ら刑事罰の重罰化、処罰範囲の拡大化が行われ、手続法的には、民事・刑事ともに公開で行われる裁判において秘密管理性が損なわれることがないことへの手続的な制度の導入、不正競争行為の立証容易化に関する制度、損害額の推定制度の導入に関するものである。

 なお、刑事罰の重罰化、処罰範囲の拡大化の概要を示すと以下のとおりである。

 平成17年には最高懲役5年、罰金500万円に引上げられ、平成18年には最高懲役10年、罰金1000万円に引上げられ、平成27年には罰金刑が2000万円(海外での取得については3000万円)に引上げられた。

 また、平成17年改正においては営業秘密侵害罪等により営業秘密を取得した者が帰属する法人に対する両罰規定が設けられ、法人に対して最高1億5000万円の罰金が科されるようになり、罰金刑の最高額が平成18年改正により3億円、平成27年改正により5億円(海外での取得については10億円)に引上げられた。

 さらに、処罰の対象となる不正競争行為の範囲の拡大については、平成17年改正において、退職者による営業秘密の漏洩、二次取得者による使用・開示、国外犯に対する処罰が加えられ、平成21年改正において任務違背による営業秘密の取得が処罰対象に加えられ、平成27年改正においては三次取得者以降の者による使用・開示、営業秘密侵害品の譲渡・輸出入、未遂犯が処罰対象に加えられ、国外犯の処罰範囲が拡大された。

 以上のとおり、営業秘密に関する刑事処罰については、平成17年以降数次にわたり改正が行われ、現在においては他の刑罰と比較しても決して軽いと評価することができない程度に重い刑罰が科される上に、処罰範囲も広範囲に及んでいる。

 近年、営業秘密漏洩に関する検挙件数の増加にともない、金銭や財物の窃取、詐取、強取、横領のみならず情報を対象とした同様の行為も刑事罰の対象になるとの認識が広まりつつあるものの、営業秘密を対象とした刑事罰の存在に関する周知としては、個人的に不十分であると感じている。

 営業秘密の保護を行っていくためには、不正競争防止法の規定をより多くの者に周知していく必要があるが、不正競争防止法が定める営業秘密に関する不正競争行為の概念そのものが複雑である上に、刑事罰の対象となる行為に関する規程も非常に難解なものとなっている。

 このような複雑、難解な不正競争防止法の規定の内容を周知させていく過程で、経済産業省等の行政機関に委ねるだけでなく、知財に携わる弁護士の努力が求められるところであり、本稿を作成するにあたり自身の責任を改めて自覚した次第である。