世代間格差の真実


 少子化・人口減少の危機は、ある意味で地球温暖化の問題に似ている。地球温暖化が単純な気温上昇ではなく、地球の熱分布の変化により大きな気候変動を引き起こすということは、すでに四半世紀以上前から予測されてきた。しかしながら、多くの人びとが言葉としては知っていた気候変動の意味を、実感として理解するようになったのは、猛暑と豪雪、豪雨と洪水、スーパー台風と線状降水帯に直面せざるを得なくなった最近のことである。これと同じように、近い将来、誰もが少子化・人口減少の危機を肌身で理解することになるだろう。

 図3は、前述した社人研のデータを用いて、2040年の人口ピラミッドを描いたものである(出生中位・死亡中位推計)。60歳代後半の出っ張りは団塊ジュニア世代――現在すでに40歳代に突入したこの世代では、約3割の人びとが無子に終わることが決定的となった。同世代の人口規模が巨大なだけに、「老後破産」する人口も巨大になると予想される。補助線で示した幹の部分は図1と同じく、平均2人の子ども、4人の孫を生み育てた人口、すなわち家族を再生産した人口に当たるが、図1に比べてずいぶんと細くなっている。

 このグラフからは一見して大きな世代間格差が存在することを読み取れる。平成生まれは、頭上にある巨大な高齢者人口の老後を、年金、医療、介護、生活保護などの社会保障・社会福祉のかたちで負担しなければならない(さらにいえば現在1000兆円を超えた国の借金を返済するのも平成生まれである)。

 ここ数年政府によって進められている「社会保障と税の一体改革」では、こうした負担の重さが「肩車型」社会の比喩――現在は平均的に現役世代2・4人で高齢者1人を支えているが、半世紀後には現役世代1・2人で高齢者1人を支えなければならない――によって説明されてきた。このような「肩車」になってしまうのは、平成生まれの親たちが属する高齢世代に、未婚者・無子者が数多く存在するからであり、もし平成生まれが自分たちの親の老後の面倒だけを集合的にみることができれば、負担は大幅に軽減される。いいかえれば、平成生まれにとっては、親孝行の方が経済的に合理的である。

 同じことを、親世代の側からみるならば、手塩にかけて育てた自らの子どもたちが同世代内の未婚・無子高齢者の生活を、年金や税金によって支えなければならないということでもある。「子育ての重い負担を免れたおひとりさまたちの老後を、なぜウチの息子や娘が支えなければならないのか」「結婚しない自由・出産しない自由は認められるとしても、老後によそのウチの子の世話になる自由はあるのか」という疑問をもつ人びとが今後増加していくことだろう。エコノミストたちは、1人の子どもを育て上げるには、2000万円から3000万円ものお金がかかると推計している(これに膨大な労力と精神的負担が加わる)。「社会保障と税の一体改革」からは、こうした再生産コストの圧倒的な不平等という視点が見事に抜け落ちている。