ただし、この強制代執行はあくまでも最後の手段=伝家の宝刀のようなもので、1戸か2戸の反対者に対して行われる。反対する人が5人、10人となれば、伝家の宝刀を抜くことはできない。

 その結果、建て替えができず、このままでは廃墟になるのを待つしかない、というマンションが日本各地に増え始めている。それが、日本のマンションの実情である。

 これは困った問題である。全員でお金を出し合って建て替えるか、廃墟になるのを待つ。この二つしか選択肢がないので、結論を先延ばしにしているマンションが増えているわけだ。

 その解決策として、第三の選択肢が生まれている。それは、建て替えではなく、「延命」という方法だ。

 「延命」は、3つの段階で行われる。
 まず、建物の耐久性を診断し、鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造の基本構造がしっかりしているかどうかを調べるのが第1段階。これなら、基本構造がまだしっかりしていると診断されたら、共用部にあたる給排水管や建物の外壁、エントランス、玄関ドア、窓などを改修する。これが第2段階で、マンションの見栄えが圧倒的によくなるし、居住性も向上する。

 さらに、各住戸内(専有部)も新しくしたい、という人には間取りや設備を一新するリフォームを行う。この第3段階は希望者だけに行うため、資金に余裕のない人は共用部の改修費用だけを負担すればよい。つまり、延命処置ならば、建て替えよりハードルが低くなるわけだ。

 もちろん、「延命」した後、いつかは寿命が尽きて「建て替え」ということになる。結論を先延ばしているだけ、とも言えるのだが、長く住み続け、「ここを終の住処にしたい」と考えている高齢者の多くには最良の選択肢になるはずだ。延命したマンションは、少しずつ不動産会社に買い取られ、最後は不動産会社の手によって建て替えられる……そのようなビジネスモデルが今後、増えてゆく可能性が高い。

 以上のように、老朽化したマンションの今後を考えると、築30年以上の古い中古マンションを買うことには、リスクがあると言わざるを得ない。もしかしたら、20年後、そのマンションが築40年になったあたりで、建て替えの話が出て、面倒に巻き込まれる可能性があるのだ。

 ただし、築30年を超えるようなマンションは、中古価格が安く設定される。安いのはいいのだが、リスクはある。それが、築年数の古い中古マンションの宿命というべきだろう。

 リスクがあるが、延命できればラッキー……とはいっても、家族のために買うマイホームで、そのようなリスクを冒すべきではない、という考え方もある。築年数の古いマンションが増えた現在、家探しで新たな迷いが増えてしまった。