ただ、開発は何も都心三区のみで進行しているわけではありません。最も空き家率が低い江東区は、オリンピックに向けて大プロジェクトが目白押しですし、東急による駅周辺の大型開発が計画されている渋谷などもあります。では、なぜこれらの区ではそれほど空き家率が高くないのでしょうか?

 これは、都心三区では、多くの一般地権者が関係する地区の開発プロジェクトが多いのに対し、江東区では都等が所有する埋め立て地、渋谷区では東急電鉄の鉄道跡地等、地上げの必要がほとんどないような地区が主な開発の対象となっているためでしょう。

 グラフは、Googleトレンドで「区名+”開発”」による検索状況を調べた結果(2015/3/6取得)を、別途まとめたものです。(度数は相対的な値です。)
 都心三区の開発への関心が相対的に高いのは、明らかでしょう。ただ、おそらくそれは、多くの人が待ちわびているから関心が高いというわけではなく、開発が自分自身に直接関係するという人が多くいるからなのだろうと思います。


東京23区の空き家問題とは?


 東京都区部では、地方で問題視される戸建ての老朽化した建物が放置されるケースも少なからずあるものの、重要な問題とまでは言えません。もともと割合は小さい上に、その多くは新たな開発に伴うものと考えられるからです。

 では、東京都区部では空き家問題が重要ではないのかと言えば、そうではありません。東京には東京で、それとは別の問題があるのです。
 東京で本当に問題視すべきなのは、賃貸物件の空室率の高さに象徴される、老朽化した集合住宅の空き家の問題です。老朽化した集合住宅が建て替えできず空室が増えることで、そうした集合住宅がスラム化することも考えられます。

 集合住宅は、権利関係者が多いという特徴があります。古い物件の中には現在の建築基準では同じように建て替えできないものも少なくないこともあり、その中で権利関係者間で建て替えの合意に至るというのは、簡単なプロセスではないのです。

 空き家が放置される問題では、東京には東京の事情、地方には地方の事情があります。地域特有の問題もいろいろあるでしょう。

 空き家問題解決のために何らかの法改正等も期待されるところですが、現状を詳しく吟味することで、そうした様々な事情を汲みつつ、効果的な対策を考えていかなければなりません。

 一人一人が当事者として、空き家問題について真剣に考えるべき時が来ているのではないでしょうか。

是非、以下の記事も参考にしてください。
■ちきりんvsイケダハヤト「通勤手当廃止」論争で語られなかった「住まいの問題」緩和策。 (本田康博 証券アナリスト)
■新相続税制で注目が増す賃貸併用住宅、本当に怖いのは国税庁よりも空室率です。 (本田康博 証券アナリスト)
■話題沸騰「正社員制度をなくしたらどうなるか問題」を、ファイナンス論的に考えてみた。 (本田康博 証券アナリスト)
■一年で3回転職したアラフォー女子、年収倍増は幸運だけが理由じゃなかった。 (本田康博 証券アナリスト)
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。 (本田康博 証券アナリスト)

■まとめ
・最近公表された「平成25年住宅・土地統計調査」確報値で、各地の空き家率の上昇傾向が確認されています。
・東京23区は空き家率の高い賃貸物件の割合が高く、全体の空き家率を押し上げています。
・都心三区で賃貸以外の空き家率が高い理由は、大勢の権利関係者がいる不動産開発が多いためです。
・東京の空き家問題は、老朽化する集合住宅の建て替え問題と大きく係っています。
・東京には東京の、地方には地方の空き家問題があり、効果的な対策が必要です。