軽減税率は購読者数減の解決につながらない


 さて、今回の新聞への軽減税率の適用、新聞業界にとっては「藁をも掴む思い」ということなのだろうが、その藁を掴んで、藁しべ長者のごとく、新聞購読者数の増加を見込むことができるのだろうか。
 
 端的に言って、増加するとは思われない。新聞の購読者数は年々減少する傾向にあり、特に若年層でその傾向が著しい。(もっとも、元々若年層での購読者は少ないのだが。)税率8%でそうなのだから、軽減といっても言い方を変えれば税率据え置きなのであり、価格が安くなるわけでもないところ、そんなことで読者が増えるとは到底思えない。(もっと言えば、低所得者は若年層に多いようであり、その若年層において新聞購読者数が少ないのに、低所得者対策とは、ますます根拠に乏しい結論であると言わざるをえない。)

 そもそも、メディア接触や情報コミュニケーションの在り方が変化しているのであるから、通信と放送の融合といった実態も踏まえて、新聞は抜本的な業態変革を図ることに注力すべきであると思う。軽減税率に血眼を上げている暇はないのではないか。(新聞の役割が完全に終わったとは言わないが、新聞社の役割の新しいカタチを模索すべきであろう。)

 今回の軽減税率のもう一つの論点として、根拠の薄い軽減税率の適用と引き換えに、政権への協力を暗に約束させられたのではないかということがある。単純に考えて、軽減税率のような大きなメリットが与えられる一方、いつその適用から外されるかという緊張感が生まれれば、自ずと論調は政権寄りになり、メディアの監視機能やチェック機能は十分に機能しなくなることは容易に想像できる。もっとも、近年では、先にも触れたとおり、情報接触は多様化し、新聞によって意見が左右されるということはなくなってきているのではないかとも思う。特にネットメディアが発展している昨今においては、新聞が権力チェック機関としての役割を十分に果たせなくとも、他のメディアがこれに代わることは十分可能である。そうなれば新聞離れは更に進むことにもなろう。(自分で自分の首を絞める、ということになるか。)

 大切なのは、メディアはどうあれ、ジャーナリズム、ジャーナリストであることであろう。

 軽減税率という「泥縄」を掴んだ新聞メディア、溺れて沈む前にこうしたことに気づくのだろうか?
(公式ブログ「政治・政策を考えるヒント!」より2015年12月17日分を転載)