失策続きの外務省への最後通牒

 ユネスコの決定まであとひと月と迫った九月七日、われわれは外務省を訪れ、早急に対応するよう求めた。その際、「南京事件のユネスコ記憶遺産申請に抗議する」と題する文書を担当者に手渡した。ひと月ほどまえに作成したもので、その最後に私はこう書いた。

「登録決定を二か月後に控え、この問題に立ち向かうべきは日本政府以外にない。日本政府が第一に行うべきことは南京事件が架空であることを認識することである。そして第二に、最近認識しはじめた対外広報の必要性を発揮することだ。じっくり発揮するというのでは遅い。国を挙げていますぐに発揮すべきである。万が一登録されたなら、責任は政府にあることを肝に銘じて行動せよ」

 ここに至っては政府が直ちに全力挙げて働きかけるしか方法は残されていない。日本はこれまで世界二位という分担金を拠出し、ここ数年はアメリカが国内法との兼ね合いで拠出していないため日本が一位となっていた。かつて日本は事務局長も務めたこともあり、いくらでも動けるはずである。

 外務省の言い分によれば、国際諮問委員会の十四人に働きかけるが、彼らは公文書保管の専門家などで働きかけを嫌うという。しかし歴史の専門家でないなら、それこそきちんと説明すべきではないのか。南京事件の登録は、世界文化遺産での明治日本の産業革命遺産の際と同じように日本の失策であり、責任はいつに外務省にある。

あら・けんいち 昭和19(1944)年、仙台市生まれ。東北大学文学部卒。レコード会社勤務をへて近現代史研究家に。「中国の抗日記念館の不当な写真の撤去を求める国民の会」会長などを務める。著書に『「南京事件」日本人48人の証言』『【再検証】南京で本当は何が起こったのか』『日中戦争はドイツが仕組んだ――上海戦とドイツ軍事顧問団のナゾ』『秘録・日本国防軍クーデター計画』など。