「06年に濃縮ウラン生産開始」の新証言


 ただ私はやはり、今回の実験がウラン爆弾の実験であった可能性が高いと考えている。その根拠は最近私が入手した寧辺の核施設の党機関で働く朴某氏の以下の証言だ。脱北者李ジョンス氏が親戚である朴氏から2006年に直接聞いたものだ。

「パキスタンからウラン濃縮技術を、カネを払って買ってきた。濃縮は1994年にはじまり2006年から基本生産に入った。ウラン濃縮施設は平安北道大館郡と平安北道泰川郡に2箇所ある」

 北朝鮮とパキスタンが90年代初め、秘密協定を結んでパキスタンの濃縮ウラン製造技術と、北朝鮮のノドンミサイル製造技術を交換したことはすでに多くの証言により明らかになっている。寧辺の核施設で勤務する朴氏は核関連の情報だけに接し、ミサイル関係につてがなかったのでパキスタンからウラン濃縮技術をカネで買ったと聞いていたのだろう。
北朝鮮が水爆実験を行った6日、原爆ドームを訪れる大勢の外国人観光客ら=広島市
北朝鮮が水爆実験を行った6日、原爆ドームを訪れる大勢の外国人観光客ら=広島市
 濃縮ウランの製造時期と製造場所について確実なことは判明していない。パキスタンがノドンミサイルを原型にしたガウリミサイルの発射実験を1998年に行ったことなどからして、北朝鮮がウラン濃縮を1994年から始めたというこの情報はつじつまが合っている。

 一方「ウラン濃縮施設は平安北道大館郡と平安北道泰川郡に2箇所ある」という情報について、北朝鮮の核施設に関して衛星写真などで観察分析を続けているジャーナリストの恵谷治氏は「大館郡には米国が核施設と疑った金倉里の大規模地下施設があり、泰川郡には巨大な水力発電所と高圧電線が張り巡らされている核関連秘密施設があるので、可能性は高い」と判断している。確かにウラン濃縮には膨大な電気が必要で水力発電所がある泰川郡とそこに隣接する大館郡は濃縮ウラン生産施設があってもおかしくない。「06年から濃縮ウランの基本生産に入った」との情報は私も初めて接するが、他の情報の信憑性の高さからして有力であることは間違いない。

 韓国国防当局は、李ジョンス氏が韓国入国直後にこれらの情報を提供したとき「米軍も知らないことをお前がなぜ知っているのか」と信じなかったが、2010年スタンフォード大学のジークフリード・ヘッカー所長が寧辺でウラン濃縮施設を見学したことを受けて李氏に「あなたの情報は正しかった」と謝罪しているという。

 朴氏の証言通り2006年から兵器級の濃縮ウランの生産が本格化したならば7年後の今回の実験にそれが使われることは自然だ。安全保障の基本は「最悪に備えよ」であり、北朝鮮がすでに相当量の兵器級の濃縮ウランを持っていることを前提に備えをなすべきだろう。

 そのことは北朝鮮核問題の重大な構造変化を意味する。北朝鮮がふんだんな原料で量産した兵器級濃縮ウランをイランやシリア等のならず者国家やアルカイダなどのテロ集団に販売する危険が高いからだ。そうなれば北朝鮮の核問題は、東アジアの安全保障の問題から中東の安保と世界の対テロ戦争の問題へと深刻化する。