金融制裁再発動と南北交易停止で外貨を絶て

 北朝鮮の場合、イランなどと違って国際市場に売ることができる石油などの資源を持っていない。したがって、彼らが核ミサイル開発を続けるためには外貨をどこかから調達する必要がある。

 ブッシュ政権はそのことを正しく理解し金融制裁を発動した。国務省に作られた北朝鮮の核開発を阻止する特別チームは北朝鮮の経常収支統計に注目したという。すなわち毎年5億~10億ドルが赤字なのに数十億ドルかけて核ミサイル開発が進んでいく。ベンツなど高価な贅沢品の現金での輸入も止まらない。北朝鮮は国庫とは別に党の39号室などが管理する秘密資金を海外の銀行の秘密口座に隠し持っていることが分かってきた。米国情報機関はその金額を40億から50億ドルと推計して隠し口座を追跡してきた。マカオの銀行バンコデルタアジアがその資金の出し入れの窓口として資金洗浄を行っていることをつかみ、同行に北朝鮮のテロ資金を扱っているという理由で米国金融機関との取引を停止するという制裁をかけたのだ。それを見ていた世界中の金融機関が北朝鮮との取引を敬遠するようになり、結果として彼らは秘密資金を引き出すことが困難になった。

 実は秘密資金の資金源の一つが朝鮮総連だった。内閣調査室が1993年に調べた結果によると、90年代初め、年間1800億円から2000億円相当が送られていた。その原資は朝鮮総連の不法活動だった。第1の手法は、組織的脱税だ。総連系商工人の税務書類を総連が代行して作成し、税務署と談判して税金額を大幅に削減させていたことは、多くの証言がある。彼らは、自分たちは1976年に国税庁との間で5項目の合意をしていると豪語していた。いわゆるパチンコマネーが北朝鮮に送られた背景にはこのような組織的脱税があった。

 第2は、朝銀信用組合を使った不正融資だ。朝鮮学校などを含む総連所有の不動産を担保にして、総連系個人やペーパー会社に朝銀が多額の融資を行なう。借り手は最初から返すつもりがなく、その資金は総連を通じて北朝鮮に送られた。当然、融資はこげ付き、朝銀は全国で次々に破綻したが、そのたびに「善意の預金者保護」の建前の下、公的資金が投入されて、対北送金でできた穴を埋めていった。総額1兆4000億円という巨額の資金が朝銀に入った。

 しかし、これらの不法送金は第1次安倍政権が「厳格な法執行」を掲げて行った事実上の対北制裁措置の結果、大幅に減少した。第2次安倍政権は1月に拉致問題対策本部会合を開き、引き続き「厳格な法執行」を継続することを決めた。その方針は正しい。

 中国は北朝鮮に原油や食糧を支援しているが外貨は渡していない。むしろ韓国が開城工団を中心とする南北交易で北朝鮮に外貨を落としている。李明博政権5年間の南北交易額は90億9600万ドル、年平均は18億192万ドルだったが、これは北朝鮮財政の約4割だ。韓国統一部によると「北朝鮮は南北交易では黒字構造を、中朝貿易では慢性的な赤字構造であるので、南北交易で稼いだ外貨が中朝貿易の増大を支えている」という。

 北朝鮮を追い込んで核ミサイル開発を止めるには39号室資金を枯渇させればよい。安倍政権は総連への厳しい法執行を続けるとともに、米国には金融制裁の再発動を、韓国には開城工団の閉鎖を求め、北朝鮮の外貨源を断つ国際包囲網の構築を目指して積極的に動くべきだ。

にしおか・つとむ 昭和31(1956)年、東京都生まれ。国際基督教大学卒。筑波大学大学院地域研究科東アジアコース修士課程修了。在ソウル日本大使館専門研究員などを歴任。「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」会長。著書に『韓国分裂』(扶桑社)『金賢姫からの手紙』(草思社)など。