多くのメディアや野球ファンが、マエケンのメジャーリーグ行きをダルビッシュ、マー君と同列に扱っているように感じるが、それは少し違う。アメリカに行ってもサイズでコンプレックスを感じる必要のない彼らと、一般の日本人が大きなアメリカ人たちに囲まれてどことなく気後れするのと同じ境遇で戦う前田健太とは挑戦の意味が違う。だからこそいっそう、マエケンの活躍を応援したい。
米大リーグ 入団会見後、ユニフォーム姿でドジャースタジアムのマウンドに
立つ前田健太投手=1月7日、米カリフォルニア州ロサンゼルス(リョウ薮下撮影)
米大リーグ 入団会見後、ユニフォーム姿でドジャースタジアムのマウンドに 立つ前田健太投手=1月7日、米カリフォルニア州ロサンゼルス(リョウ薮下撮影) 

 もうひとつ、前田健太には大きな使命がある。それは、「故障せず、元気に投げ続ける」こと。残念ながら、「日本人の先発投手は長持ちしない」という認識がメジャーリーグで定着し始めている。松坂大輔しかり、田中将大しかり、ダルビッシュしかり。活躍はするが短い期間で故障する。堅実な活躍を続けた黒田博樹は少数派で、ほとんどの先発ローテーション投手は事実、手術を受け、長く戦列を離れる例が多い。

 今回の契約は、8年総額約29億円と言われている。他に出来高払いの条件があるとはいえ、年平均3億5千万円だから、広島時代の推定年俸3億円と大きな差がない。これは、マエケン自身の「日本での登板過多の影響」を案じられ、「身体検査でイレギュラーなところがあった」という事情もあるが、それ以上に、先輩たちの悪しき前例が大きい。

 あの松井秀喜でさえ、周りの選手のパワフルなバッティングに不安を感じたと言われる。松坂大輔も同様だ。それで、熱心に筋トレに取り組み、それが逆に本来の動きやフォーム、身体のしなやかさを失わせ、ケガを誘発したとも見られている。マエケンには先輩たちの過ちを教訓にしてほしい。マエケンは先輩たちより身長が低い、だからこそ、身長やパワー不足をコンプレックスに感じるのでなく、あくまで自分の持ち味を信じ、いっそう磨いて勝負する覚悟が成功のカギではないだろうか。

 かつて、「そんな投げ方はメジャーリーグでは許されない」くらいの批判を浴びながら動じず、一切自分の流儀を変えずに「トルネード投法」で旋風を巻き起こし、新たな歴史の扉を開いた野茂英雄。彼に続いて黙々と自分の役割を果たし続けた先輩・黒田博樹の背中に学んで、マエケンらしい投球を展開してほしい。