兵器と目標の組み合わせ


 格闘戦闘機であるゼロ戦はその前の世代より重装備で七・七㎜機銃と二十㎜機関砲を備えた。ゼロ戦の他に空母搭載機としては三人乗りで高高度水平爆撃機としても雷撃機としても使え二百五十㎏の通常爆弾及び通常六十㎏爆弾六発もしくは二百五十㎏爆弾二発搭載可能な九七式艦上攻撃機がある。さらにドイツのユンカースJu-87と同類の二人乗り二百五十㎏爆弾を搭載する九九式急降下爆撃機がある。


 兵器目標テーブルは各目標の種類に応じてどの兵器を使用するのが適切であるか示すものでXはおよその対応を示すが必ずしも最適な対応を示すものではない。その兵器システムが目標に対する妥当な能力を有することを示すに過ぎない。SEAD(Suppression of Enemy Defenses)は敵の防空の制圧を意味しており機上掃射または爆撃で達成する。

 真珠湾作戦には六隻の空母が作戦に割り当てられた。追加の翔鶴、瑞鶴の完成は出発日の数週間前に過ぎず飛行甲板要員の訓練には不十分だった。練度に応じて両艦の搭乗員の攻撃目標としては敵航空基地が指定された。六隻の空母が提供するのは四百十七機の航空機で機種はほぼバランスがとれていた。
攻撃直前の99式艦爆。後ろは空母蒼龍
攻撃直前の99式艦爆。後ろは空母蒼龍

 雷撃機は目標の指定に優先方式を採用していた。作戦上の優先順位は戦艦と空母で、優秀な諜報により各戦艦の位置を把握しており、一から八まで順位をつけていた。九七式艦上爆撃機は最初の戦艦四隻を攻撃して空母が停泊中であれば空母を狙うとされた。空母が居なければ、残り五〜八の戦艦を攻撃。九九式急降下爆撃機は巡洋艦を担当する。

 但し、この説明は作戦命令とは合致しない。空母攻撃隊作戦命令三号では、「第一波の目標は四隻の戦艦と四隻の空母に限定され、順序は戦艦、そして空母」とされている。

 戦後、雷撃機搭乗員の多くは第一優先順位として空母を攻撃するよう指定されたと述べている。明らかに公式の優先順位は最高指揮官の意図を意識したものだ。山本には戦艦が最優先であると報告された。先端の技術に通じた源田と淵田美津雄は雷撃機の四〇%は空母を目標にすることを考えていた。

 雷撃隊は淵田の決定によって一列縦隊で攻撃したがこれは見事な選択だった。戦艦に対しては何本もの魚雷を回避できないように並列が常道であるが、真珠湾は入り江が狭く妨害物が多いので長い列が最適と考えた。

 次の図から問題なのは十八攻撃ルートのうち十一ルートが交差しており、相互に干渉しかねない。良好な通信と緊密な指揮があればよいが、各指揮官は最良とみなすルートを選ぶ権限を有しており、各機は指揮官との通信ができない状況であった。さらに異なる攻撃隊との攻撃ルートとも交差していた。これでは空中衝突、ニアミスが起こりうる。雷撃機は一列縦隊で攻撃することになっていたが、違う空母から発進した雷撃機の場合、調整はできない。戦闘が開始された後の指揮は指揮官にとって悪夢であった。

 日本海軍の通癖であるが計画通りに行くことを想定して、うまく行かなかった場合の是正がなされない傾向がある。