二酸化炭素削減は本業の現場で行うのが筋


 居酒屋チェーンのノウハウは何だろうか。おいしくて安い料理を早く提供する、料理を各チェーン店に配送する、接客の方法、店舗開発の方法などが考えられるが太陽光発電事業とのシナジーは思いつかない。では、何故太陽光発電事業を行うのだろうか。ワタミに限らずソフトバンクなどにも同じことが言える。何のシナジーもない事業に進出するのは何故だろうか。

 環境のため、二酸化炭素を削減するためというが、そうであれば、発電事業はエネルギー関係の企業に任せればよい。自社で異分野の事業を行う必要はない。ワタミグループの必要とする電力の16%「相当」を風力と太陽光発電で賄うことになるというが、場所も営業時間帯も違う自社が使用するはずもない電気を作る発電事業で二酸化炭素が削減されたと主張するのには無理があると思う。その理屈でいけば、どんな企業でも再生可能エネルギーによる発電を行えば、自社の二酸化炭素排出量を削減できる。

 二酸化炭素削減は本業の現場で行うのが筋だ。店舗の電球をLEDに変える。空調設備の効率を上げる。調理器具を電気にする。宅配の車を天然ガス自動車にする。現場で二酸化炭素を削減する方法は多くあり、それは自社でなければできないことだから、まずそれに注力するのが大事だ。ワタミは本業では二酸化炭素削減の余地はもうないのだろうか。

 では、なぜ発電事業なのか。答えは簡単だ。確実に儲かるからだ。再生可能エネルギーからの発電については、国の固定価格買い取り制度のおかげで事業用の太陽光発電設備からの電気は20年間の購入が保証されている。一度設備を作ってしまえば間違いなく収入がある。

 異業種からの参入は、固定価格買い取り制度を日本に先駆け導入した欧州でもあった。ドイツ、イタリアなどでは新たに太陽光発電事業を始める企業が相次いだ。設備さえ作れば、収入は国が20年の長きに亘り保証してくれる。確実な投資と言われる国債購入よりも利益率が高く、収入が確実なおいしい事業だ。

再生可能エネルギー利権に群がる人たち


 昨年の7月1日から開始された日本の固定価格買い取り制度では、非住宅用太陽光設備(10kW以上)からの発電の今年度の買い取り価格は1kWh当たり37.8円だ。ワタミの太陽光発電設備は15,000kWだから、この買い取り価格になるはずだが、ワタミの発表では42円だった。ここにカラクリがある。固定価格買い取り制度では、原則申請し認可を受けた時点の買い取り価格が適用される。昨年度の買い取り価格は42円だった。ワタミは昨年度認可を受けた設備をこれから建設するということだ。竣工時期は来年の11月だ。認可を受けてから完成まで少なくとも2年近くの時間がかかっている。

 ここに再生可能エネルギー利権が生まれる余地がある。買い取り価格は毎年下がっていく。前年度までの買い取り価格で認可を受けた案件を保有している事業者は、太陽光発電事業を検討している第三者に案件を売却すれば、儲けることができる。設備を今年度申請する事業者が得られる買い取り価格は37.8円だが、昨年度認可を受けた事業者から案件を買えば、42円受け取れる。

 このため、昨年度末申請ラッシュがあった。とにかく認可だけ受けようとする事業者がいたのだ。固定価格買い取り制度開始前の事業用太陽光発電設備は累計でも90万kWしかなかった。昨年7月の制度開始から申請が殺到した。その結果昨年度末、即ち今年3月末時点で認可済みの非住宅用太陽光案件は累計1868.1万kWにも達した。一挙に既設の20倍だ。一方、そのうち設置済みのものは70.6万kWしかない。工事に時間がかかるにせよ全体の5%にも届かない数字だ。中にはとりあえず高い買い取り価格で認可だけ受けようとした事業者がいたということだろう。

 再生可能エネルギー利権だが、この買い取り価格を負担しているのは電気の消費者だ。事業者は制度を利用し、より大きい利益を得ることができるが、負担するのは消費者だ。負担額は地域により少し差があるが、平均すると今年度は1kWh当たり0.4円の見込みだ。その金額のなかに高い前年度価格を利用した事業者の利益額も含まれている。