新電力の設備量は地域電力会社の1%


 既に自由化されている特定規模需要5441億kW時(13年度)のうち、新電力の供給量は227億kW時、シェアは4.17%だ。今年4月に電力供給を行っていた新電力は59社だ。しかし、発電設備を保有している新電力は9社しかない。設備量は合計で232万kW。北海道から沖縄までの地域電力会社10社が保有する設備量、2億932万kWの約1%に過ぎない。

 新電力の設備のうち最大の発電設備は大阪ガスの泉北天然ガス火力、能力は111万kWあり、新電力全部の設備能力の約半分だ。次に大きいのは大王製紙の52万kW、さらに王子製紙の27万kWだが、ともに自社工場向けの供給が主体で、外部には殆ど販売していない。結局、新電力の設備のうち供給に使われている設備は150万kWしかない。

 新電力が供給している電気は、大半が自社設備ではなく、地域電力を含めた他社の発電設備から購入したものだ。家庭用需要が自由化されれば、新しい発電設備を作る企業はでてくるのだろうか。先述の発電設備向け投資の意思決定が他の設備投資と異なり難しいこと、また欧米で起こっていることをみると、新規の発電設備への投資を期待することは難しい。自由化されても、設備が増えなければ、競争は期待できず、値下げが実現される可能性も薄い。 新規に供給を行う事業者は、値下げを行うことはできるのだろうか。

ソフトバンクは電気を安く供給できるのか


 孫正義氏は、脱原発のために再エネを進めていると公言しているが、その一方かつて電力会社の買収も考えたが、収益が出ないビジネスでは株主の納得を得られないから諦めたとも言っている。利益がでない事業には関心がないということだろう。今太陽光発電を中心に再エネに熱心なのは、固定価格買い取り制度により収益が確定するうま味のある事業だからなのだろう。

 家庭向けが自由化された際には電話との組み合わせで電気も販売する意向との報道もある。しかし、電話と異なり電気料金を、例えば長期契約を前提に値引くことは難しい。電話のコストは一定だが、電気のコストは変動するからだ。原子力、再エネなど燃料代が不要な電源であれば投資を行った段階で将来のコストを予測可能だが、再エネの電源はいつも発電できるわけではない。火力発電の燃料は、通常1年以上の長期契約で購入されることはない。電気料金を長期に予測することはできないということだ。どんな割引サービスができるのだろうか。

 孫は、時々停電する質の悪い電気でも安ければよいという需要家もいるだろうと言っている。月に数百円から数千円節約できれば、冷蔵庫が止まっても、盛り上がっているテレビドラマが中断してもよいという需要家はいるのだろうか。電話回線を増やすと、通話が集中すると携帯が通じなくなることがある。電気も電話と同じで良いと考えているのだろうか。

 電気は電話とは、設備投資の意思決定もコスト構造も違う。競争が激しくなっても、料金は下がらない可能性がある。少なくとも、公共性の高い事業を行うのに相応しい理念を持った企業が新規事業者として参加することにより、良い選択肢が増えることを期待したい。