介護にさせないことにチャンスあり
 「介護者をどうするか」でなく「介護にならないためにどうするか」、それが予防視点だ。日本人の平均余命は女性87歳で世界1位、男性81歳で世界3位、平均寿命から介護時を引いた「健康寿命」は、女性は75歳、男性71歳と世界最長だ。課題は平均寿命から健康寿命を引いた約10年の介護期間だ。いかに介護期間を減らしピンピンコロリの人生を送れるか、ここに課題解決のチャンスがあるはずだ。

 介護にさせない、介護にならない視点から注目したいのがCCRCというコミュニティだ。CCRC(※Continuing Care Retirement Community)は健康時から介護時まで安心して暮らせるシニアのコミュニティであり、全米で約2千ヵ所、約70万人が居住し、市場規模は約3兆円にもなる。このビジネスのポイントは介護で儲けるのでなく介護にさせないことで儲けることであり、運動、食事、予防医療、生涯学習など介護にさせない仕組みが緻密に組み込まれている。老人ホームでは介護ヘルパーしか雇用が生まれないが、CCRCでは健康ビッグデータの解析者など多様な雇用が生まれる。CCRCは、現在政府において「日本版CCRC(生涯活躍のまち)」として地方創生の主要施策となっており、約250の地方自治体が推進意向を示しており、今後の成否が注目される。
参考:Sankei Biz 高齢者地方移住、新ビジネスの好機 大学などと連携も 三菱総研・松田智生氏
米国のCCRCにて。平均年齢84歳のアクティブシニアと筆者
6設計を活かせ
 新たな挑戦には制度設計が鍵となる。例えば健康を維持すれば、その人の医療費や健康保険料が安くなる、あるいは預金の金利が上がるような健康インセンティブだ。またシニアが50時間働いたら、その50時間は自分の介護時に使えるようなマイレージ制度も有望だ。前述した日本版CCRCでも、もし居住者の自立度や介護度が改善されたら事業者には奨励金や減税をなすべきである。今の高齢者住宅は介護になれば儲かる仕組みだが、限られた税収のなかで介護保険に依存した収益構造は持続可能とは言い難い。ゆえに介護インセンティブから健康インセンティブの制度設計が重要なのだ。

 第二義務教育制度、これは60歳になったらもう一度学校に行かねばならないというアイディアだ。もう一度学校に行って地域の課題や自分の老後を考える。学校では給食も出る。友人もできる。シニアの社会参加で課題なのは、「一歩踏み出せない」層であり、その背中をいかに押すか、「義務教育」を逆手にとってはどうか。

否定語批評家症候群を打破せよ
 ここで紹介した新たな挑戦を阻むものは何か?それは否定語批評家症候群だ。否定語批評家症候群とは、出来ない理由を論理的に言って得意になっている連中であり、得てして優秀と言われる人に多い。制度で出来ない、地域性で出来ない、出来ない理由を言わせたら天下一品の人々だ。しかし出来ない理由を幾ら述べたところで課題は何も解決しない。また「いかがなものか」と言う人、これも要注意だ。いかがなものかを英語で意訳すれば「I have no idea」と同じだ。否定、批評、疑問も結構だが、否定語批評家には必ず対案・代案を出すことを求めたい。

東洋のダボスを目指せ
 世界経済フォーラムが開催されるスイスのダボスは、「経済のことを知りたければダボスに行け」と言われる。今後は、「超高齢社会のモデルを知りたければ日本に行け」と言われるようにすべきだ。介護難民のような悲観的な四文字熟語から脱却して、国民がワクワクする前向きな話にしようではないか。かつてマルコ・ポーロの時代に、黄金の国・ジパングと世界が憧れた日本は、「プラチナの国・日本」として再び輝くチャンスにあるのだ。逆転の発想でピンチをチャンスに変えるのは今なのだ。