「紅二代」は金融覇権を目指す


 江沢民派の超大物、周永康(前政治局常務委員・序列9位)が、収賄と職権乱用、機密漏洩などの罪で無期懲役と政治的権利の終身剥奪、個人財産の没収を宣告されたことは記憶に新しい。江沢民自身は軍事パレードに出席し健在ぶりを示したものの、かなりの高齢である。そういった中でここ数年、急浮上してきたのが江沢民の長男で還暦を過ぎた江綿恒、ではなくその彼の息子で江沢民の直系の孫に当たる1986年生まれの江志成だ。

 ハーバード大学を卒業後、ゴールドマン・サックスに入社し投資手腕を磨いたとされる江志成は、2010年に博裕投資顧問(Boyu Capital)を創設した。投資者にはシンガポール政府系投資会社テマセク・ホールディングス、フォーブス誌の長者番付の常連(2015年度は世界17位・アジア1位)である長江実業グループの総帥・李嘉誠などの名前も並ぶ。博裕は創業翌年、北京や上海の国際空港にある免税店を運営する日上免税行の経営支配権を取得し、「祖父の七光り」を見せつけた。

 一躍、彼の名を世界に知らしめたのは昨年、アリババ・グループ・ホールディングス(阿里巴巴集団/馬雲会長/浙江省杭州の電子商取引企業/1999年創立)の新規株式公開(IPO)に関わり、NY証券取引所に上場した際に莫大な富を得たと報じられた時だ。ニューヨーク・タイムズ紙(2014年7月21日)は、「アリババの背後にある、多くの紅二代株主が米国上場の真の勝者」との論評を掲載した。

 複数の香港メディアも江志成の他、劉雲山政治局常務委員(序列5位)の息子・劉楽飛らがアリババに投資したことを報じている。「アリババの馬雲会長と江沢民の孫や劉雲山の息子などの紅二代らは、尋常でない政治的野心を持っている」「江沢民の孫ら一部の紅二代の同盟は単純なものではなく、北京当局が警戒している」などの記述も散見する。

 それにしても中国A株の大暴落が「金融クーデター」だったとして、いかなる方法で仕掛けたのか? 専門用語でダークプール(代替執行市場とも呼ばれる)だと考えられる。証券取引所を通さず、投資家の注文を証券会社の社内で付け合せて取引を成立させる取引所外取引の一種で、一般的に機関投資家やヘッジファンドが参加者となる匿名証券取引である。

 このダークプールについて、「市場の透明性を阻害している」との批判もあるが、米英そして香港の機関投資家の間で盛んだ。中国のA株市場も、借金してまで株に群がる裸の個人投資家以外、このダークプールに似た構造で動いているはずだ。つまり紅・官二代の一部は、庶民には数えきれないほどの「0(ゼロ)」が並ぶ巨額な資金を、匿名性も担保しつつ数字上で瞬時に動かす“新型兵器”を所持している。