歴史は繰り返す


 昭和16年の『神戸新聞』(4月26日付)に、興味深い記事を見つけた。表題は「ユダヤ財閥頻に暗躍 南方資源の買占めに狂奔 サッスーン、香港で反日策動」。その内容を一部抜粋する。

 --(前略)ユダヤ財閥の暗躍は熾烈を極め東亜におけるユダヤ財閥の巨頭フリーメーソン東洋部長サッスーンは我が大東亜共栄圏建設妨害の一行為としてこのほど仏印における米の買占めに成功したといわれているが、上海よりの情報によれば5月中頃香港において開催される重慶支持の南洋、蘭印、仏印、印度華僑の代表者会議はサッスーンと蒋介石政府との談合により我が南方政策の先手を打って物資の買占めをせんとするものであり、これが資金は一切サッスーン財閥によって支弁される、これはサッスーン財閥がアメリカユダヤ財閥と緊密なる連絡の下にかく反日行動に出たもので、ユダヤ研究者間の定説でありまたサッスーンと蒋介石、仏印当局との深き関係等々、陰に敢行されていた聖戦妨害行為は漸く表面化し、各方面の憤激の焦点になりつつあり、このサッスーン財閥の動向は聖戦貫徹の上から重視されている-

 昭和12年からの支那事変(日中戦争)は約8年に及んだが、国民党・蒋介石軍の戦費の大部分はユダヤ財閥サッスーン(当時、英ロスチャイルド家の東アジア代理人で、アヘン密売で莫大な富を築いたとされる一族)が援助してきたこと、孫文や蒋介石の妻となった宋家(浙江財閥)がユダヤ資本と入魂の関係にあったことは周知の事実だ。

 20世紀初頭に「魔都」「東洋のニューヨーク」などと呼ばれたサッスーン家の富の象徴、上海の外灘(バンド)の摩天楼は、1世紀を経た今日まで中国の繁栄を象徴する顔だ。鄧小平復活とワンセットで1979年に創設されたのは国策投資金融会社、中国国際信託投資公司(現・中国中信集団公司CITIC Group)で、「紅い資本主義」路線で外資導入による経済発展への道のりを歩んできた中、国際金融資本との緊密な関係により「紅い財閥」が群雄割拠する時代となっている。

 ちなみに江沢民の実父(江世俊)は汪兆銘政権の官僚、つまり戦時中に日本に協力した「漢奸(売国奴)」であり、国民党特務機関の一員だったことも暴露されている。共産党の「皮」を被っただけの一部勢力の「成果」が汚職による巨万の富の蓄財と、国内外を震撼させかねない「金融爆弾」のノウハウだとすれば、「ハエも虎もキツネも退治」の大号令で、粛清に躍起になる習政権を支持する海外勢力が存在していてもおかしくはない。

 大胆かつ大雑把に言えば、中国共産党内の熾烈なバトルは、米国VS英独仏国などとの代理戦争の意味合いが大きいと考えている。国共内戦ならぬ「共・共内戦」だ。江一族は米国の国際金融資本と少なからず近い関係にあり、周永康を手足に長年培ってきた石油利権を通じてロックフェラー財閥との繋がりも強い。ASEAN諸国を主軸に大中華経済圏を形成していくためにも、欧州列強との経済関係の強化に邁進してきた団派を含めた習近平一派と、英王室チャールズ皇太子による「おぞましい、古びた蝋人形」との酷評に激怒したとされる江沢民を主軸とする米国利権派という構造だ。

 中国は紛れもなく、進みつつある国際秩序の大転換の主役(悪役)である。一方で中国は、国共内戦時代どころか清朝末期に先祖帰りしているようだ。「抗日戦争勝利70周年」の式典でも、習主席は天安門広場でなく故宮の太和殿の中庭に赤絨毯を敷いて、各国の来賓を迎えていた(清朝までの皇帝スタイル。時代劇にも良くあるシーン)。

 9月末、習主席は初の米国公式訪問に臨み、年内には「江沢民の天敵」英国を公式訪問してエリザベス女王にも謁見する予定だ。習政権の存続は現状、五分五分だろう。だが国共内戦に敗れた国民党・蒋介石軍が台湾へ逃げ込み、今日に至るまでまがりなりにも政権与党であり続けてきたように、「共・共内戦」に敗れた中国共産党幹部も、どこかで延命していくはずだ。危惧するのは、中国国内が混乱を極め国防動員法が発令され、日系企業とその資産が事実上、接収されるなどの経済的な大ダメージを受けること。そして、かつての国民党軍のように中国共産党幹部や野蛮な人民解放軍が「沖縄」になだれ込むことだ。その可能性はゼロではない。

かわそえ・けいこ 昭和38(1963)年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学を卒業。86年より北京外国語学院、翌87年から遼寧師範大学へ留学。主に中国、台湾問題をテーマに取材、執筆活動を続ける。『中国人の世界乗っ取り計画』『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』『だから中国は日本の農地を買いにやって来る』(いずれも産経新聞出版)、『国防女子が行く』(共著、ビジネス社)など著書多数。