大軍拡と海洋覇権もなだれ込んだドルが支える

 安定した元の威力が最も発揮されたのはリーマン後である。グラフ1を見て欲しい。米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年秋まで3度にわたってドル資金を大量発行する量的緩和政策に踏み切った。すると、人民銀行による元資金供給量もドルに連動する形で急上昇している。米国からあふれ出たドルが中国市場になだれ込んでくる。人民銀行はそれを外為市場で買い上げて外貨準備とし、その相当額の元を金融機関に供給する。国有商業銀行などはそこで元資金を企業や地方政府の不動産開発事業向けに融資する。不動産開発投資を中心とする固定資産投資は中国の国内総生産(GDP)の5割を占め、経済成長率をたちまちの間に押し上げる。もとはと言えば元を党の手で安定させる管理変動相場制あってこその離れ業だが、中国は世界でいち早くリーマン後の世界不況から立ち直ったばかりか、2ケタ成長まで取り戻した。GDPの規模は2010年に日本を抜き、世界第2位の経済超大国として国際的地位を高め、アジアにおける影響力を飛躍させた。

 人民銀行はリーマン後のドル資金増加量にぴったり合わせて元資金を発行してきた。元は言わばドルの裏付けを持つわけで、中国内外での信用が高まり、貿易面を中心に元の国際決済が広がる。アセアン、韓国、台湾に限らず日本の企業も金融機関も元資金を持たないとビジネスにならない。日本政府はともかく、各国政府が北京にすり寄る背景である。
グラフ1
グラフ1
 グラフ1で注目して欲しいのは、中国の軍事予算規模である。それは元の資金供給量の増勢によって引き上げられ、ドル資金供給の増加と連動している。中国の資金力の膨張は軍事予算を支え、豊富な外貨で空母を含む強力な兵器の調達を支えてきた。南シナ海や東シナ海での中国軍の増長、高度な海外の土木技術を必要とする南沙諸島の埋め立てを支えるのはマネーである。