膨張システムは破綻外貨準備は実質カラだ


 中国膨張の方程式が狂ったきっかけは2012年から13年に起きた不動産バブル崩壊である。不動産開発投資は低調になり、成長の減速が始まった。すると、それまで流入を続けていた資金の流出が始まる。12年秋の党大会で党総書記に就任した習近平の政権は元を小刻みに上げて、国内からの資本逃避を防ぐとともに、海外からの資本流入を促そうと試みる。もとより、対中投資の大半は香港経由であり、そのうちかなりは外資を装った中国の投資家で、ほとんどが党幹部に直結している。建前上は厳しい資本流出入規制を実施している中国で、特権を駆使する党幹部だけがその網の目をくぐれる。言い換えると、中国は党支配体制だからこそ資本逃避が慢性化する構造になっている。総書記就任前の12年前半にわずかずつ人民元を低めに誘導すると、資本逃避が起きた。あわてて元を高め誘導したらデフレ圧力が高くなったので、14年前半には再び元安方向に修正したら、やはり資本逃避が再発する。

 景気の方は14年初めから停滞感が強くなる一方である。中国当局発表では14年は7%台半ば、15年も7%の実質成長を続けているが、モノの動きを忠実に反映する鉄道貨物輸送量は前年同期を下回り、以来マイナス幅は拡大するばかりである。その場合、金利を下げ、元安にするのが景気対策というものだが、すると資本逃避で国内資金が不足する。

 窮余の一策が株価引き上げである。14年後半、習政権は党・政府総ぐるみで株価引き上げキャンペーンに乗り出した。人民銀行は利下げし、幹部自ら株式投資を勧める。証券業界に資金を流して、個人投資家の信用取引を奨励する。党機関誌、人民日報は株式ブームをあおり立てる。株価上昇で外からの資金流入を促そうとして、11月には香港証券取引所経由による外国人の上海株投資を上限付きで解禁した。株価は急上昇起動に乗ったが、実体景気は鉄道貨物輸送量が示すように事実上はマイナス成長であり、株価とのかい離が広がる。典型的なバブルである。そして6月中旬、香港経由の上海株売りが口火を切って、株価暴落が始まった。習政権は政府・党・国有企業・金融機関総ぐるみで株価押し上げを図り、公安当局まで動員して市場統制を強める。株価は小康状態を取り戻したかのように見えたが、8月11日に人民銀行が元の基準レート切り下げに踏み切ると、資本逃避が一挙に加速し、人民銀行はあわてて元の買い支えに追われる始末である。人民銀行はさらに景気刺激と株価てこ入れのために追加利下げすると、資本逃避にはずみがついた。

 人民銀行は元を買い支えるために外貨を売って元資金を吸収する。資金の対外流出額はことし6月時点経常収支黒字と外貨準備の増減からみて、年間で6000億ドル近い。外準は8月には昨年6月から4300億ドル以上減少した。

 外貨準備はそれでもまだ3兆5000億ドル以上あり、日本の3倍以上になるとの見方もあるが、対外債務は5兆ドルを超えている。いわば、外から借金して外準を維持しているわけで、外国の投資家や金融機関が一斉に資金を引き揚げると、外準は底を突く恐れがある。