北京の「強気」に騙されるな

 それでも、中国当局は強気一辺倒である。9月5~6日、トルコ・アンカラで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、人民銀行の周小川総裁は株式バブルを認めたうえで、「市場の調整はほぼ終わった」と大見えを切った。「安定」とは、当局が株式市場への介入や統制を全廃したあとの市場動向をみて、初めて判定できる。乱高下は収まっていない。つまり調整局面がほぼ終わったとは真っ赤な嘘である。

 中国は8月下旬に預金金利を追加利下げしたが、短期金融市場では銀行間融通金利上昇が止まらず、翌日返済融通金利は預金金利より高くなった。資本逃避が加速したためで、金融緩和が収縮を招いている。

 9月13日に北京は大型国有企業への党支配を強化する形での再編成方針を発表した。産業部門の過剰生産能力を党主導で温存するつもりだ。鉄鋼は余剰能力が日本の年産規模1億1000万トンの4倍以上、自動車産業の総生産能力はことしの販売予想の2倍以上、年間4000万台を超える。それでも党内の実力者たちが利権拡張動機で、影響下に置く国有企業各社を保護するだろう。

 輸出を大幅に伸ばそうとして、人民銀行がもう一段の元安に踏み出そうとすれば資本逃避はさらに加速する。中国は通貨安競争で世界を混乱させる前に自滅しよう。
グラフ2
グラフ2
 グラフ2(P101)は国際商品市況と中国の鉄道貨物輸送量の推移である。同輸送量は「北京当局のファンタジー」とまで多くの専門家から評される国内総生産(GDP)に比べ、信頼度がかなり高い経済指標である。中国景気は昨年はじめから下降局面に入り、連動する形で鉄鉱石、天然ゴム相場が下がり、後を追うように原油相場が急落した。

 国際商品市況の低迷は世界景気不安につながるとの見方がメディアでよく報じられるが、変な話である。確かにロシア、中東など資源輸出国にとってみればマイナスだろうが、世界景気を引っ張るのは日米欧など消費国にとってみればチャンスである。日本の実質成長率は、消費税増税による後遺症から抜けきれず、前年度に続きこの4~6月期もマイナスが続いている。輸入コストの下落は内需振興に向けた財政・金融をフル稼働させるゆとりをもたらしたのだから、この機をいかせばよいだけだ。インドなど新興国も対応策を急いでいる。安倍政権は円資金を活用して東南アジアやインドなどとさらに緊密に協力するチャンスだ。