実は日本の育児休業制度、けっこうよくできているのだ。北欧を除けば、世界の最高水準にあるといってもよいと私は思う。そして制度改正のたびに、男性の取得者を増やすべく、工夫を続けてきた。男性が2ヶ月以上取得すると満1歳までの育休を1歳2ヶ月まで延ばすことのできる、いわゆる「パパクォーター制」や、先に挙げた2014年改正の最初の6ヶ月間67%というのも、男性にとってもらうためのしかけである。育休を取りたいという男性はさまざまな調査で3~4割に上っており、国は男性の育休取得率を2020年に13%に上げるという目標を立てているが、現状はここ数年2%前後を行ったり来たりするだけだ。男性が育休を躊躇する最大の理由は、「職場の理解がない」ことであるのが、これも調査で明らかになっている。そして国会もまたそういう「理解のない職場」なのだ。

 少子化と男性の育児休業の関係について、少したとえを使ってみよう。いま植林をする林業者と、植林をしない林業者が、競争をしたとする。これは必ず植林をしない林業者が勝つ。相手の林業者が植林をしている間も木を伐り続けることができ、木1本にかかる工賃が安くなるからだ。消費者が何も知らなければ、植林をしない林業者の安い木のみが売れ、やがて日本中の山がはげ山になる。そして30年後に私たちはその保水力を失った山林からの大水害という形で、30年間植林の代金を払ってこなかったことのツケを一気に払わされる。実は、私たちは植林をする林業者の高い木を1本1本買うことで、30年後の大水害を防ぐコストを積み立てていたのだ。

 少子化と何の関係があるのかと思うかもしれないが、植林をしない林業者を男性労働者、植林をする林業者を女性労働者、植林を子育てと置き換えてみてほしい。なぜ企業が、女性よりも男性を雇う傾向があるかがわかる。つまり現状のように女性ばかりが育児をする状況を考えれば、企業は女性を雇ったときにのみ、家事・育児の時間があるために、夜遅くまで働かせることはできないと考える。育児休業もとるのは圧倒的に女性が多いので、共働き世帯でも育児全般を主に女性が担っている。ところが男性は、あたかも背後に子どもや要介護の高齢者はいないかのごとく働く。ほとんど家事をしないために、残業もさせやすい。植林、つまり子育てのコストは、女性労働者の肩の上にのみ加算されているように、企業には見え、したがって植林のコストがかからない、男性労働者を雇いたいと考える企業が多くなってしまうのだ。

 しかしこうした状況が長く続けば、植林のコストが払われないまま、労働力という木が売れている状態が続くのだから、日本中がはげ山になる。これが少子化という現象だ。つまり今の日本の職場は「植林をしながら働く」ということが難しくなっており、実は、次世代の育成に必要な植林のコストを、応分に負担していない状況が長く続いているのだ。子育てのコストが、女性と男性との間で対等に分担されていない、という問題が解決しない限り、逆に言うと、男性を雇っても、女性を雇っても、「背後には子育てのコストがある」と考えられるようにならない限り、この問題は完全には解決しない。

 夜遅くまで人を働かせることは、植林をしない林業者の木を買い続けているのと同じ現象で、短期的には、そして一企業にとっては、一見メリットになるように見えても、社会全体としては、次世代の労働力を再生産できない、という大変大きなデメリットを抱えることになる。

 第1子の育児で男性が協力的だった場合の方が、そうでなかった世帯よりも第2子を産む可能性が高いことも調査で明らかになっており、男性の育児参加は有効な少子化対策でもある。だからこそ国会には目覚めてほしい。男性議員の背後にも子どもや要介護の高齢者など、ケアを必要とする人たちがいて、それを前提として社会が回らない限り、この社会は持続可能なものにならないのだと。

 その実感すら持てない人たちに、少子化対策の議論などしてほしくない。そのためにも男性国会議員の育休は、絶対に認めるべきなのだ。