「歯止め」がかかり「切れ目」が増えた

 肯定的に言えば、法案の実質的かつ大幅な「修正」であり「歯止め」だが、視点を変えれば、「切れ目」とも評し得る。たとえば今後、参議院が承認しない場合、政府は自衛隊を派遣できない。

 それ以前の問題として、国会承認を得るまでに要する時間が対応の「切れ目」となる。国会閉会中なら、最低でも三日かかる。運よく開会中でも、野党が「葬式ごっこ」の真似をしながら牛歩戦術を駆使したり、「セクハラ作戦」で議長や委員長を閉じ込めたりすれば、時間的な「切れ目」は拡大する。げんに先の国会でそうなった。

 本来なら護憲派が「民主的な文民統制が強化された」「歯止めがかかった」と合意を評価し、保守派が「切れ目が増えた」と批判すべきところであろう。ところが現状は正反対。なんとも不毛な議論ではないか。

 合意が残した「切れ目」はホルムズ海峡の場合に限らない。こうも合意された。

「重要影響事態においては、国民の生死にかかわるような極めて限定的な場合を除いて、国会の事前承認を求めること」

 集団的自衛権に次いで、護憲派が大騒ぎした論点が「重要影響事態(と認定した場合における後方支援活動)」である。

PAC3は自衛隊には平成19年から配備されている(航空自衛隊提供)
PAC3は自衛隊には平成19年から配備されている(航空自衛隊提供)
 今回いわゆる一般法(恒久法)として「国際平和支援法」が新たに整備された。この新法の要件を満たした場合、今後、自衛隊が「協力支援活動」を実施できる。NHK以下マスコミはこれを「後方支援」と呼び、批判したが、正しくは「協力支援」であって「後方支援」ではない。

 この新法による「協力支援活動」は「例外なき事前の国会承認」に基づく。法律上そう規定された。なぜ「協力支援活動」が「例外なき事前の国会承認」とされたのか。連立与党が抵抗したからである。護憲派マスコミ世論に阿ったからである。自民党政府が譲歩し妥協を重ねた結果である。

 それと同じことが土壇場の国会で起きた。ホルムズ海峡などの「存立危機事態」(集団的自衛権)に加え、重要影響事態も「国会の事前承認」とされた。例外は「極めて限定的な場合」に限られる。拙著で「協力支援活動」の課題として論じた指摘がみな、ここにも当てはまる。

 今回の法改正で、従来の「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律」は「重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律」に改正される。つまり従来の「周辺事態」が「重要影響事態」に変わる。拙著で詳論したとおり、そう名前が変わるだけで、中身はほとんど変わらない。

 護憲派メディアは「周辺」が外れ、「地球の裏側まで自衛隊が『後方支援』で派兵される」と非難したが、政府が何度も答弁したとおり「周辺事態」は元々地理的概念ではない。

 NHK以下マスコミがなんと言おうが、真実は一つ。名前が変わるだけで、中身は大して変わらない。たとえば、右法律の「別表(第五条関係)」は改正されない。

 具体例として朝鮮半島有事を想定いただきたい。北が韓国に南進するケースよりも、北の体制が内部崩壊するケースのほうが、リアリティが高い。どちらにせよ法的には「重要影響事態」となり得る。

 その際「実施する船舶検査活動に関する法律」だが、同法により、北朝鮮の不審船に、海上自衛官が乗り込む可能性は事実上ない。