負担を外部に押し付ける方法


 では、融資先に対する負担転嫁はできるのか。日本では、マイナス金利の導入で住宅ローンの金利もマイナスになることを期待するマスコミ報道もあるが、それは甘い見通しである。例えば、スイスの住宅ローン市場は寡占的である影響もあるが、マイナス金利の導入に伴うコストをモーゲージ金利に転嫁し始めている。

 もっとも「オーバー・バンク」とも言われるように、日本では民間銀行間の競争が激しい。また、日銀による量的・質的緩和でマネタリーベースが2倍以上に増加したにもかかわらず、人口減少や国内需要の低迷で貸出は期待どおりに増えてない。このため、貸出を伸ばすことや貸出金利を引き上げることで、マイナス金利導入に伴う負担を外部に転嫁するのは容易でなく、収益源の乏しい地方銀行を中心として、そのコストは銀行セクターが引き受けるしかない。
 ただ、上記以外にも、マイナス金利の負担を外部に押し付ける方法がある。それは、マネタリーベースを拡大するため、日銀が「国債の買いオペレーション」を実施するときに、銀行等が保有する国債をより高い価格で日銀に売却し、マイナス金利の負担を日銀に転嫁する方法である。例えば、残存期間10年の国債を売却し、マイナス金利で合計5億円損失が予測される場合、これまで100億円で日銀に売却していた国債を105億円で売却する方法である。

 これは「(マイナス金利の負担を含む)日銀当座預金」と「国債」の等価交換であり、このような負担の転嫁ができれば、銀行等はマイナス金利の負担を免れる可能性があるが、今回のマイナス金利政策は裁量的で、抜き打ちでルール変更を行う不確実性がある。

 もし日銀に対する市場参加者の信頼が揺らぎ始めれば、日銀による国債の買いオペレーションは札割れを起こし、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は早晩行き詰るリスクを抱えている。