櫻井さんは、あの優しい笑顔からは想像もできない、火のような怒りを持つジャーナリストである。日本には、不幸なことだが、事実に基づかないまま、「日本」を貶めようという不思議な人々がいる。自分たちを「リベラル」と称し、過去の歴史を直視する、などと言いながら、実際には、真実を確かめることなく、日本を貶めることに邁進している人々である。

 櫻井さんのように、真実を追求しつづけるジャーナリストには、そのことが、どうしても理解できない。しかし、彼らを追及することは、朝日新聞をはじめ巨大メディアを「敵にまわす」ことを意味する。

 しかし、櫻井さんは、どんな「相手」に対しても、また、どんな「タブー」に対しても、一度も怯んだことがなかった。あの優しい笑顔の奥に、どれだけの闘志と、正義感と、そして日本を愛する心を、秘めているのかを思って、私はいつも勇気づけられた。

ドリーマーvsリアリスト


 櫻井さんの特徴は、その怒りと共に「繊細さ」と「優しさ」にある。どんな時も、きめこまかな気配りと、優しく繊細な視線を忘れないことだ。

 血友病エイズ患者や北朝鮮拉致被害者のご家族のために、すべてを擲って協力する姿には、心を打たれる。

 もう恒例となった日比谷公会堂でおこなわれる「北朝鮮拉致被害者救済のための国民大集会」で、いつも総合司会に立つのは、櫻井さんである。

 何をおいても駆けつけて、ご家族と哀しみを共有するのが、櫻井さんだ。最も苦しんでいる方に、優しい言葉をかけ、哀しみを分かち合うことは、簡単なことではない。血友病エイズ患者や北朝鮮拉致被害者のご家族に対して、ここまで親身になって活動を支えようとするジャーナリストを、私はほかに知らない。記事に書くときだけ同情したふりをする新聞記者たちとの決定的な「差」がそこにある。

 私は、今の日本は、「ドリーマー(空想家、夢想家)」と「リアリスト(現実を見る人)」との対立の時代だと思っている。

 ドリーマーとは、現実には決して目を向けず、観念論や抽象論だけをふりかざし、いまだに「左」と「右」の対立でしか物が見えない単一思考の人間たちである。

 彼らの特徴は、物事を自分の身に置き換えて考えることをせず、いつも他人事として突き放す点にある。日本にどんな危機が迫ろうが、観念論と抽象論に浸りきった彼らには、なんの関係もない。そのドリーマーが、マスコミで驚くほど多いことも、また事実だ。

 そんな中で、真実を見つめる“勇気のジャーナリスト”櫻井さんの役割と責任は、増えることはあっても、減ることはない。年を経るごとに、その思いが強くなる。

 日本がドリーマーたちによっておかしくなろうとする時、必ず立ちはだかってくれるのが、櫻井さんである。

 多くの国民が、そのたびにハッとさせられているのではないだろうか。その意味で、櫻井よしこさんは、間違いなく“日本の宝”である、と私は思っている。

かどた・りゅうしょう 1958年、高知県安芸市生まれ。中央大卒業後、新潮社に入社。週刊新潮編集部に配属され、以後、記者、デスク、次長、副部長を経て、2008年4月に独立。『甲子園への遺言—伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯』(講談社)や『なぜ君は絶望と闘えたのか—本村洋の3300日』(新潮社)など著書多数。