「DREAMER」対「REALIST」


門田 いまおっしゃった相違を判断する基準は、じつは「左派か、右派か」ではありません。安倍首相を右翼と呼ぶ人びとやマスコミは、自民党と社会党の対立という55年体制の幻想を引きずった「55年症候群」に罹っているだけでしょう。

 日本の真の対立軸は「現実を直視しているかどうか」です。「DREAMER(空想家、夢想家)」対「REALIST(現実主義者)」の戦いですね。

櫻井 そのとおりです。そして日本を取り巻く現実は、いまや中国の脅威を抜きにして判断できません。尖閣諸島沖に公船を送り込んで領海侵犯を繰り返し、南シナ海で人工島を建造して「自由で平和な海」を破壊しようとしている。さらに沖縄県の普天間基地の辺野古移設に反対する活動家を見れば、沖縄県民よりも本土の人や外国人が多数を占めています。中国による工作の手が及んでいる、と考えざるをえません。

 門田 『日本、遥かなり』に登場する人びとはイランやクウェート、リビアなど日本から遠く離れた地で働き、世界のREALな姿を肌で知っている。これだけ世界中で日本人が活躍している現代ですから、そのような人は数多くいるはずです。

 問題は、世界の常識を知らないドメスティックで不勉強な政治家であり、彼らを支持する「55年症候群」の人びとやマスコミのほうです。

櫻井 自民党議員のなかでも、たとえば船田元氏は明らかに「DREAMER」側の人でしょうか。氏はかねてから、9条の改正に関してネガティブと受け取られてもおかしくない言動をしていました。2015年6月4日には、衆議院憲法審査会に憲法学者の長谷部恭男氏(早稲田大学教授)を参考人として招き、長谷部氏に安保法案を「憲法違反」と批判される、という不始末を起こしています。私が不思議に思うのは、船田氏はその審査会の場で、なぜ即座に「長谷部さんは憲法違反とおっしゃるけれども、それでは国民の安全はどうなるのか。現行憲法で、日本人の生命が守れると思うのですか」と反問をしなかったのでしょうか。

 こうした動きに自民党全体が引っ張られてしまい、立党時から掲げる「自主憲法の制定」という党是を見失うことがあってはならないと思います。自民党内の憲法改正に向けての動きはいま、とても低調です。それでも私は、安倍首相ご本人の決意は揺らいでいない、と考えています。何より国民投票法の改正や18歳選挙権など安倍政権のこれまでの「行動」が、首相の決意を物語っているのではないでしょうか。

「ストップ戦争法案」の運動そのものが憲法違反


門田 憲法というと9条しか知らない人が多くて困りますが(笑)、ご指摘のとおり、憲法13条では「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とあります。国民の生命が脅かされる事態になれば、個人の幸福追求などありえない。他国に支配されたり、拘束されたりすれば、その時点で、自由も、生存権も、幸福追求権も、すべてなくなるからです。

 それゆえ、主権国家に与えられるのが自衛権なのです。国民を守る権利の意味を理解しないまま、自衛権を「憲法違反」と断じることが、いかに現実から遊離しているか。

 日本のドリーマーたちは街頭で「ストップ戦争法案」と叫び立て、集団的自衛権や自衛隊の存在自体を「憲法違反」だといっています。しかし、日本国憲法をないがしろにしているのはむしろ彼らのほうです。