名捕手の証明、イコール、好リード。好リード、イコール、巧みな配球というイメージが根強い。実際に捕手のリードは、投手との間の取り方、投手から見える捕手の雰囲気づくりなど、配球に限らない。だが、配球こそがその中核を成すと信じられてきた。その最も大事な務めをベンチが奪い取る。

 それは決して、常識外れのことではない。データ分析の進むMLBでは、ベンチがサインを出すのは珍しくないという。捕手にはむしろ、捕手にしかできないプレー、つまり強肩で盗塁を阻止する、どんな投球も捕球する、ボテボテのゴロの処理、そして攻撃の際の強打を求める傾向も強い。
プロ野球 DeNA春季キャンプ 紅白戦 ベンチで盛んにメモをとるアレックス・ラミレス監督(右) =沖縄・宜野湾市立野球場(撮影・荒木孝雄)、2月7日
プロ野球 DeNA春季キャンプ 紅白戦 ベンチで盛んにメモを
とるアレックス・ラミレス監督(右) =沖縄・宜野湾市立野球場
(撮影・荒木孝雄)、2月7日
 かつて日本では、「捕手はデブでも鈍足でも構わない」というイメージがあった。ところが、最近の野球で「捕手の条件」といえば、「足が速いこと、動きが素早いこと」も重要になった。低めの落ちる変化球が多用されるようになって、捕手のすぐ前に転がるボテボテの打球が急増した。昔はそのような打球はあまりなかった。これを捕って一塁でアウトにできるのは、捕手以外にいない。投手では間に合わないからだ。そこで、捕手のすぐ前の打球に素早く対応することは、捕手の重要な役目のひとつとなった。そうなると、捕手が常に意識を向けるべき要素はますます多様になって、キャリアの浅い捕手は「配球まで余裕がない」、そのため、打撃面で低打率にあえぐ捕手も多く見られるなどの現実が実際にある。そこを解消するのがラミレス監督の狙いだろう。

 果たして、それで選手は面白いのか、野球は面白くなるのか。

 実は、日本の高校野球ではすでにこの方式は広く採用されている。どうしても負けられない、一発勝負のトーナメント戦を勝ち抜いて甲子園出場を目指す高校野球の監督たちの中には、配球のサインをベンチから自分で出している監督も少なくない。練習試合ではベンチで出し、捕手を指導するという監督もいるが、大事な試合になればなるほど、監督が捕手の配球を支配する例は強豪校にはよく見受けられる。日本野球においては、この傾向が、プロ野球にも波及する形だ。果たして、それで若い捕手がのびのびとプレーし、投手によい影響を与えるのか、打撃で活躍する捕手が増えるのか、チームの成績は上昇するのか。また、捕手はやりがいをもって伸びるのか? オープン戦からここを注目し、シーズンを通して、目を配って見るポイントといえるのではないだろうか。