片山修(経済ジャーナリスト)
暗雲垂れ込めるといったらいいでしょうか。
シャープの取締役会は、台湾の鴻海精密工業の支援を受け入れることを決定しました。
電機業界初の、外資傘下での再建が始まると報じられ、鴻海の作戦勝ちかと思った矢先、当の鴻海は、シャープが24日に提示した文書を精査するために、契約調印をしばらく見合わせるという声明を発表しました。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、「将来現実化する恐れのある約3500億円の債務リストをシャープから受け取った」といいます。
ようやく決まったかに見えたシャープの支援先ですが、また、見当がつかなくなりました。白紙に戻るのでしょうか。
シャープの支援をめぐっては、鴻海と産業革新機構の間で、ギリギリの攻防戦が繰り広げられてきました。経済産業省や金融機関、業界関係者は固唾を飲んで状況を見守っています。

シャープ本社の旗(安元雄太撮影)
じつは、シャープの支援をめぐっては、鴻海や産業革新機構、銀行など、当事者間で思惑が錯綜しています。
指摘するまでもなく、銀行は“金融論理”で動きます。したがって、革新機構の日本の技術を守るという“日の丸論理”とが正面衝突したわけです。
私はこれまで、カギを握っているのは、意外にも銀行ではないかということをいい続けてきました。シャープの主要取引銀行は、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行です。みずほは鴻海案、現執行部は革新機構案を推しているといわれてきました。
では、みずほは、どのような思惑があって、鴻海案を推していたのでしょうか。
まず、指摘できるのは、鴻海案のほうが、銀行の痛みが少ないということなんです。
鴻海案は、シャープ支援に7000億円規模を出資するとともに、銀行の優先株2250億円分を買い取るとしました。つまり、銀行に痛みを求めないというわけです。
現に、鴻海会長の郭台銘氏は、「銀行に一銭たりとも損をさせない」と発言しました。
これに対して革新機構案は、3000億円出資する一方、優先株2250億円分は銀行に債務放棄を求めます。すなわち銀行が負担することになっていました。となると、当然、銀行には痛みが伴います。
ただし、話は、そんなに単純ではありません。みずほの思惑は、別にあるとみていいのではないでしょうか。