鴻海案の場合、鴻海の有利子負債7500億円の一部は、もともと鴻海とつながりの深いみずほなどが貸し出すといわれています。銀行としては、おいしい話です。債権を放棄しなくてもいいうえ、優良融資先を確保できるわけですからね。

 さらにさらに、みずほには、その先にも狙いがあると思われます。海外戦略です。すなわち鴻海に通じることで、中国市場への進出をより確かにしたいのではないかということです。

 いま、日本の銀行は、生き残りをかけて海外進出を図るなど、海外戦略に注力しています。

 例えば、みずほの“Super30戦略”がそれです。海外4地域(米国・欧州・アジアオセアニア・東アジア)から、それぞれ非日系優良企業約30社を選定し、多面的な取引拡充により長期的な関係構築に取り組んでいます。鴻海は、その30社に含まれていたとしても不思議はありません。

 もっといえば、みずほの海外戦略の中枢を担うのが、中国市場です。鴻海は台湾企業ですが、親中派といわれています。みずほには鴻海とのつながりを契機に中国市場に入り込もうという考えがあるのではないかとの見方もできます。

 シャープは、2016年3月末には、約5000億円という巨額の借金の返済期限が迫っており、会社の存続は綱渡りの状態です。このままだと、債務超過に陥りかねない。この土壇場をどう乗り切るか、シャープがぎりぎりのところに追い込まれていたことも、鴻海案を受け入れた理由といっていいでしょう。

 しかし、そもそも債務超過に陥りかねない、ギリギリのところまでシャープが追い込まれたのは、経営陣の責任です。もっといえば、経営の失敗です。だから、産業革新機構は、現経営陣の刷新を提案したのだと思います。ところが、鴻海案では、経営陣の続投が決められていました。果たして続投は正しいのかどうか。

 じつは、12年3月、韓国のサムスン電子に対抗するという名目で、シャープと鴻海は資本業務提携をしました。

 鴻海は、一株550円で発行済みのシャープ株9.9%を取得する予定でした。ところが、その後、シャープの株価が暴落するや、出資条件の見直しを迫りました。それがトラウマになって、現経営陣は“鴻海不振”をつのらせていました。そこで、今回、シャープ経営陣は、12年の二の舞を防ぐため、鴻海から支援金の内金として1000億円を求めたのです。鴻海は、その支払いに応じるというわけです。

 産業革新機構は、今回、経産省の後ろ盾のもと、シャープの白物家電との統合を提案している東芝も含めて、日本の宝である電機産業の技術を守りたい。日本の電機産業の再編、立て直しの“大義”を掲げました。その大義を、結果としてシャープは拒絶しました。

 日本の家電産業は、今後、どうなっていくのでしょうか。

 というのは、鴻海は、シャープを解体せずに存続させるとしていますが、その具体的な中身は、はっきりと示していません。さらに、今回は、ようやく鴻海支援で決着したと思った矢先の契約延期の発表です。4年前の“業務提携解消”を思い出させます。いったい、どうなっているのでしょうか。どこまで信用していいのか、不安、不信感、疑問が募ります。いったい、こんなことがありなのか。

 考えてみれば、“鴻海に決定”は、あくまでシャープの取締役会での決定で、それについて鴻海は、買収の調印を行っていません。結論は、鴻海の契約延期によって宙に浮いた状態です。

 企業文化、さらには、バックグラウンドのお国柄の違いがあるなか、シャープと鴻海が組んだ場合に、どこまで相乗効果が発揮できるのか。未知数といわざるを得ません。

 シャープ支援は、もう、まったく予断を許さないことになってきました。シャープはこのまま漂流なのでしょうか。