ドラッグ・コートは、1989年、大量のキューバ難民の流入で困っていたフロリダ州マイアミに始まるのですが、現在、全米で2000以上のドラッグ・コートがあります。厳罰主義の限界を痛感した裁判官たちが始めた施策ですが、都市のスラムを管轄する裁判所では、裁判所長は、厳罰主義だけでは人気を得られない。アメリカでは、裁判所所長は、住民の選挙で選ばれるので、処罰と支援のメリハリのある政策を行っていることをアピールするためにも、ドラッグ・コートは重要でした。これに注目が集まり、燎原の火のように全米に広まっていったのです。厳罰主義への反動、その裏返しといっていいでしょう。

 これを日本に一番最初に紹介したのは平野哲郎さんという裁判官(現立命館大学教授)で、彼がワシントン州へ留学中にドラッグ・コートを知り、日本に紹介したのですが、あまり注目されませんでした。裁判官たちの反応は、「日本じゃ無理だ」というような感じだったようです。なぜかというと、日本の裁判所には、ドラッグ・コート裁判官のような権限はないし、財政上の保証もありません。検察官も、薬物犯罪には、基本的に厳罰主義で対処してきましたしね。

 最近注目されているのは、警察の動きです。薬物事犯は逮捕して、単純な所持や使用については即決手続をとれば2週間後に裁判があって、その日に執行猶予が言い渡される。トータルで1カ月ちょっとで事件が解決してしまう。これでは、この人たちを野放ししているに過ぎない。そこで、民間の団体に業務委託して、任意の薬物テストを受けることを約束させ、その予後を観察する。強制力はないけれど、これは一つの方法かもしれません。

 もう一つ、仮釈放には必ず保護観察がつきます。この期間、薬物事犯については定期的に保護観察所に行って薬物検査をさせる。併せて、薬物依存者用のプログラムをやって、2週間に1回程度のグループカウンセリングをやる。仮釈放するときには、遵守事項というのがついて、それに違反すると仮釈放が取り消され、刑務所に戻されることがあるのですが、薬物依存症者には特別遵守事項を付けて、薬物依存プログラムに参加することを義務付ける。2007年から執行猶予者の保護観察にも特別遵守事項が付けられることになったので、執行猶予でもプログラムをつけることができるようになりました。その後、更生保護法という法律ができて、二つの保護観察が一本の法律に規定されることになりました。私は、弁護士登録しているので、薬物の弁護のときには、保護観察付き執行猶予を求めて、再度の執行猶予を求める弁論をしています。裁判所は、なかなか慎重で、この制度をまだ活用してはいません。