脆弱なASEAN諸国の力


 中国とASEAN諸国の間では、2002年に「南シナ海行動宣言(DOC)」を合意し、領有権紛争の平和的解決、事態を悪化させる行為の自制、協力事業の推進などを確認しているが、中国が合意を守らず強引に海洋侵出を進めるため、ASEAN諸国は、DOCに法的拘束力を持つ「南シナ海行動規範(COC)」の策定を求めている。一国対一国の紛争解決を求める中国に対し、多国間のルールづくりにより中国の横暴に対峙しようというのだ。今年8月、マレーシアで開催されたASEAN地域フォーラムにおいて、ASEAN諸国と中国の間ではCOC協議を加速することで合意したようだ。

 しかし、妥協する素振りを見せながら、一切本質を変えず、国家すなわち共産党の意思を貫き通すのが中国である。協議を引き伸ばしながら、着実に中国海警局の態勢を充実させるなど、自国の海洋管理を確立させる動きを進めている。

 2014年にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議に中国の代表として参加した王冠中・人民解放軍副参謀長は「南シナ海は2000年以上前から中国の支配下にある」という趣旨の発言をした。中国が、習近平国家主席の指導の下、「中華民族の偉大なる復興」を目指して「海洋強国」となる戦略を進めているのは周知の事実だ。

 中国は、南シナ海海域全体を「九段線」の考えに基づき、中国の領海と位置づける。九段線は、南シナ海に点在する島々を囲い込むように九つの線を引き、その内側の海域全体を管理下に置こうとするものである。1994年に発効した国連海洋法条約では、領土である陸地を基点として、その陸地から最大12海里(約22・2キロ)の領海と200海里(約370キロ)までの排他的経済水域の設定が認められているが、九段線内側にあるスプラトリー諸島には20ほどの島や岩礁があり、中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどの国々の領有権の主張が重複し、簡単に領海や排他的経済水域を設定できる状態にない。そのために中国は島の領有問題を無視し、海域全体を支配しようというのだ。

 これに対抗するアジア各国の海洋警備力はまだまだ脆弱であり、中国には太刀打ちできないのが実情である。中国とフィリピンやベトナムなどの国々が、偶発的に武力衝突を起こす可能性も高く、紛争を事前に抑止するためにも、一刻も早くCOCを合意しなければならないのだ。

 それと並行して進めなければならないのが、アジア各国の海上警備力の強化における国際協力体制の構築である。COCにより、海域の安全確保のための法的拘束力ができたとしても、現状ではそれを管理する機関はない。そのため、各国の海上警備機関の能力向上と連携、協力体制の構築が求められるのだ。