「人工島」は「島」ではない


 公共放送以下マスコミがなんと言おうが、真実は一つ。人工島は領海を持たない。アメリカが勝手にそう言っているのではなく、国際法で決している。たとえば国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約・以下「国連条約」)でこう明記されている。

「人工島、施設及び構築物は、島の地位を有しない。これらのものは、それ自体の領海を有せず、また、その存在は、領海、排他的経済水域又は大陸棚の境界画定に影響を及ぼすものではない」(60条8項)

 右条文を読んだうえで意図的に右の報道を繰り返したのなら、もはや卑劣な売国奴である。なお、アメリカが国連条約の当事国でないことを挙げ、「米政府に右条文を援用する資格はない」と主張する者もいるが、法的な妥当性はない。なぜなら国連条約の成立以前から「領海及び接続水域に関する条約」が伝統的な解釈を採用して「島」をこう定義したからである。

「島とは、自然に形成された陸地であつて、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。2島の領海は、この条約の規定に従つて測定される」(10条)

米海軍のイージス駆逐艦「ラッセン」
米海軍のイージス駆逐艦「ラッセン」
 右の「自然に形成された」(naturally-fomed)とは「人工的な関与がまったくない」こと。もちろん人工島はこの要件を欠く。ゆえに「島」ではない。過去「人工島についても限定的な要件の下、領海を持ち得る」と(中国以外からも)主張されたが、右のとおり明記され、加えて国連条約が同要件を踏襲したことで、この論点は「実定国際法上の解決をみた」(山本草二『国際法』有斐閣)。

 それは中国当局もご承知であろう。だからこそ埋め立てを急ピッチで進めてきた。今後「漁民」など民間人の入植を促進し、彼らの居住や経済活動を定着させていくつもりであろう。国連条約は「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定する(121条3項)。つまり「岩」は「島」ではない。したがって強引に「人間の居住又は独自の経済的生活を維持」して「島」と主張するに違いない。

 だが中国政府(と日本のマスコミ)がなんと言おうが、真実は一つ。人工島は「島」ではない、いくら埋め立て、大勢の中国人が居住しようが領海を持たない。

 今回、米軍が航行した海域は中国の領海ではなく国際法上の公海である。公海は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、すべての国に開放される。そう「公海に関する条約」(87条)が明記している。国連条約もそう明記した。この公海の自由は「航行の自由」と「上空飛行の自由」を含む。その他「科学的調査を行う自由」などもあるが、条約はそれらに留保を加えた。他方「航行の自由」と「上空飛行の自由」に留保はない(これを同視した外務省公式サイトの説明は不正確)。

 分かりやすく言えば、航行と上空飛行については完全に自由。「公海は平和的目的のために留保されるが、それによって公海での軍事演習や兵器実験をはじめ武力紛争または軍事行動が当然に禁止されるとはいえない」(前掲山本)。つまり、やりたい放題。実際、核保有国は白昼堂々、公海上で核実験を繰り返してきた。もちろん「戦略上の抑止任務」も自由かつ合法。だから核大国は戦略原潜などを公海に配備している。