交通機関がすべて運休?「あのね、ヒースローは国際的な大空港なのよ。そこに通じる交通機関がすべてなくなるなんてありえないでしょ」と相手にしない私。こうしてクリスマスイブは過ぎ、満腹で楽しく解散となった。

 ところが翌朝、ホテルのレセプションで訊くと、「ロンドンでは今日は電車もバスも終日運休。唯一動いているのはタクシーです」。

 ガーン!!

 「ヒースローまではタクシーで約120ポンド(2万400円)。クリスマス料金ですからね。スタンステッド空港は200ポンド(3万4000円)ぐらいです。予約しましょうか?」

 昨夜「大丈夫!」と太鼓判を押したことなどすっかり忘れて焦る私。「ほら、だからいったでしょ」と次女。それにしても、この情報過多のご時世に、なぜ、私たちはこのような重要事項を知らずにいままで生きてこられたのか?

 そのあとの娘たちの行動は凄まじかった。長女はスマホでガンガン情報を集め、割安の私設タクシーのようなのを見つけ、サッサとヒースローに行ってしまった。一丁上がり。

 問題は三女のスタンステッド空港。街の中心からバスが出るという情報があり、そこに皆で行ってみることにする。彼女はどのみちバックパッカーなので、4人でぞろぞろクリスマスのロンドンを歩いた。すべてのシャッターが閉じ、地下鉄の入り口には鉄柵。道路は北朝鮮状態で、マクドナルドさえ開いていない。もちろん、美術館、博物館も26日までは休館。死の街ロンドン!

 結論からいえば、三女のゲットしたのは偽情報で、バスなどなかった。困っているうちに、お腹がすく。しかし、レストランは全滅。そのうち、「あ、あそこ、開いてる!」「入ろう、入ろう!」

 知らずに入ったそこは、五つ星ホテルのカフェだった。フィッシュ・アンド・チップスが15ポンド(2600円)。またもやガーン! ロンドンのクリスマスは、お金に羽が生えて飛んでいく。とはいえ、三女もいつしかスマホで呼んだタクシーもどきで消えた。目的地はアルバニア。一昨年、NGOで14カ月も住んでいたのだが、この国は経済的に完璧に破綻。現在、多くの経済難民がシリア難民に混じってドイツに殺到し、問題になっているが、その混沌とした国を、娘はこよなく愛しているのであった。

上から下まで中国人


 翌26日はボクシングデイと呼ばれ、日本の初売りのように、多くの店がバーゲンをする。娘たちに取られたタクシー代を取り戻すチャンスとばかりに勇んで出かけたら、華やかなロンドンのショッピング街はすごい人出で、しかし、よく見ると中国人ばかりだった。バーバリーのビルは、上から下まで客の90%が中国人。あとの5%がアラブ人で、残りの5%がその他の人びと。爆買いは下火どころか、ロンドンでは燃え盛っている。
 ハロッズの1階にはブランド物が並ぶが、ここも7割方が中国人で、2割がアラブ人。中国人の長い行列ができていたので何かと思って先頭まで覗きに行ってみたら、グッチのハンドバッグ売り場だった。品物が勝手に手に取れないようになっているので、買いたければ並ぶしかないらしい。

 そうするうちに、ニューヨークに飛んだ娘からメールが入った。「無事に着きました。でも、ここ中国人ばっかり!」。アルバニアに行った娘からは、「足裏マッサージって知ってる? すごいよ、これ!」と感極まったメールが。聞いてみたら、なんと、ここも中国パワー全開。世界は大変なことになっている。