反対声明を出した韓国の市民団体に理由を聞いた


 しかし、城東区当局は中止通報を撤回せず、イベント会場にもさまざまな団体の人々が抗議に集まってきており、直前でのイベント中止に至った。イベント中止について、同推進室は「極めて残念だ」と悔しさをにじませた。

  韓国中央政府も開催を働きかけていたのに、ソウル市城東区当局が中止通報を撤回しなかったのはなぜなのだろう。今回の東北PRイベントに対して、開催反対の声明を出した市民団体「環境運動連合」(KFEM)に、イベント反対の理由を取材した。

 KFEMのエナジーコーディネーターの男性は、取材に対し、「今回のイベントは福島県産の食品の輸入制限を解除するために行うものであり、放射能で汚染された食品を輸入する動きは受け入れられない」と反対の理由を述べた。「我々は、福島県産の食品が輸入される可能性について、怒りと懸念を表明するため、今回の反対運動を行った」という。

 イベント開催反対運動に対して、城東区当局は理解を示し中止に至ったとKFEMの担当者は話す。「中央政府は、政治的・外交的観点からものごとを進めようとするが、地元自治体は市民の声により敏感だ。特に韓国は4月に総選挙を控えているので、今回我々の声を聞き入れたのだろう」と、運動の成果を強調した。

日本産水産物の輸入制限が続く韓国と台湾


 日本政府が、韓国で東日本大震災からの復興をPRするイベントを開いた背景には、韓国が行っている日本産水産物の輸入制限がある。韓国は2013年9月から、福島、茨城、群馬、宮城、岩手、栃木、千葉、青森の8県産の全ての水産物の輸入を禁止している。8県以外の水産物であっても、韓国側の調査でセシウムが微量でも検出された場合は、追加検査を要求。この検査が数ヶ月かかるため、生ものである水産物の輸出は、実質的に困難になった。

 政府は、韓国の水産物輸入制限が「科学的根拠に基づかない」として解除を求めてきた。日韓の専門家が2014年12月に福島、青森、北海道産の水産物の放射性物質を測定した結果、不検出か、韓国の定める厳しい基準でさえ大幅に下回る結果が出ている。


 政府は、韓国が輸入制限を解除する見通しが立たないため、昨年8月にWTO(世界貿易機関)に対して、韓国を提訴した。外務省北東アジア課によると、提訴手続きは、現在、パネリスト(裁判官に相当)が選ばれた状態まで進んでいる。

 台湾も、日本産食品に対して輸入規制を行っており、今回、外務省が韓国と台湾でイベントを企画したのは、日本産食品の安全性を市民にPRする狙いがあったといえる。

 日本産食品の輸入規制解除には、現地市民の理解が不可欠だ。イベントを主催した外務省地方連携推進室は、来年度も引き続きさまざまな活動を通じて「風評被害の払拭と、正確な情報発信に努めたい」と述べた。
(中野宏一/THE EAST TIMES)