書籍スペースを中心にして、周辺に飲食店やグッズ販売店を置き、店舗エリア全体でエンターテイメント性を打ち出す。顧客は、カフェスペースでコーヒーを飲みながら購入した本を読むことができる価値を提供し、本との接触時間を増やすことに成功している。

 しかし、この方法には大きな問題がある。カフェやその他施設を併設するための資金だ。ツタヤのような大企業ならいざしらず、地方都市にあるような小さな書店では到底マネできない。書店単体で接触時間を伸ばす方法を考えなければならない。本との接触時間にはやはり、取り扱いタイトルを増やすしかないだろう。

 もちろん、単純にタイトル数を増やすことはできない。営業面積は限られている。そこで、既存の店舗のまま取り扱いタイトルを増やす方法として、在庫保管用に使われているスペースを再利用できないだろうか。

 例えば、書店のショールーミング化はどうだろうか?これはファッションの世界でゾゾタウンが試みたケースが有名だ。店舗に見本の服を置き、試着して気に入った顧客がWEBサイトで購入するという仕組みだった。驚きの方法だったが、インストアの売上に対して家賃などを課金している百貨店サイドからの抵抗に合い、うまく進んでいない。もちろん、書店でもエキナカや百貨店といったインストアの場合は難しいが、店舗として独立しているのであれば、そのような縛りはない。

 書店でのイメージはこうだ。タイトルごとに1冊だけ見本としておいておき、立ち読みし、購入したいと思った顧客が、その見本をレジへ持っていく。レジでは、ISBNコードなどを利用して、購入者の自宅へ配送する。受け取りはネット通販同様に自宅でもコンビニでも選べるようにしておくといった流れだ。この仕組みによって得られるメリットは、在庫を削減した分だけ取り扱いタイトルが増やせるほか、出版社への在庫返品の手間が減ることなどもメリットとして考えられる。

 しかしながら、この方法も現実的ではない。リアルの書籍ならではの「購入後すぐ読める」という価値を失うほか、「特定の書籍をアピールする平積み」ができない。さらには立ち読みしたあと、そのままスマホ経由で購入されてしまい、ネット通販の売上に自殺点を入れてしまう格好になる恐れも想像できるからだ。

リアル書店ならではの「強み」


 ここまで、本と似た性質を持つ音楽業界からのヒントや、カフェなどの併設、さらには在庫スペースを利用した取り扱いタイトルの増加などを洗い出してみたが、どれも現実的には難しい。

 とはいえ、電子書籍との比較にはなるが「現物としての書籍」特有の価値は間違いなくあるはずである。それは「紙であること」だ。当たり前だが、ネット通販で扱われる書籍は手に取ることができない。数ページを読むことができる「立ち読み機能」が付いているときもあるが、書店でパラパラとめくるほうが、現時点では使い勝手が良いのは紛れもない事実だ。

 またネット通販には、中身の確認を補完するためにカスタマーレビューもあるが、一時期問題として巷を賑わしたように、ステルスマーケティング(ステマ)による賛同レビューはいまだ散見され、全幅の信頼がおけない状況もまだ完全に解消されていない。紙ならでは強みがあるのは、現にアマゾンがリアル店舗を出していることもその証左だ。

 残念ながらこうした強みを活かした手段はまだ見いだせていない。しかし、無類の本好きの一人として、これ以上書店が減り続けるニュースは聞くに堪えない。微力ながら引き続き打開策を模索していきたい。


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