このリフレ政策に大きくブレーキをかけ、2014年の経済成長率をマイナスにおとしいれ、さらに15年も(推測だが)0%程度でしかない低成長に落とし込んだのが、消費の低迷、その原因としての14年4月からの消費増税の影響である。片岡剛士氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員)は、2014年4月以降、家計消費はL字型に大きく落ち込み、そのまま回復せずに消費は低迷したままだと指摘している。そして消費の落ち込みが、この二年余りの経済低迷の主因でもある。しかも片岡氏は、2015年秋以降は、さらに家計消費は落ち込みはじめ、「消費の底割れ」が見られるという(「消費低迷の特効薬」を考える http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/kataoka/column/kataoka160304)。

リーマン・ショック級のような出来事が起らなければ、消費再増税を
明言している安倍首相(斎藤良雄撮影)
 この「消費の底割れ」の原因は、それまでの消費増税によるL字型への消費落ち込みの継続に加えて、15年7月から顕在化した世界同時株安による資産効果の縮減が大きく寄与しているだろう。また現状では堅調なままの(ただし改善の余地は前述したように大きくある)雇用状況も、経済低迷が今後も続き、また中国経済の減速など国際環境の変化などを踏まえると悪化の可能性が否定できない。まさに日本経済は再び「失われた20年」に逆戻りする瀬戸際に立っているだろう。そしてこの状況は、政策サイドが何もしないでは悪化することはあれ、改善することはない。

 特に来年度に予定されている消費税の10%への再引き上げは、日本経済の息の根をとめかねないインパクトをもたらすだろう。政府の「国際金融経済分析会合」に招かれたスティグリッツ氏や、ポール・クルーグマン氏(ニューヨーク市立大学大学院教授、ノーベル経済学賞受賞者)は口をそろえて、安倍首相らに消費増税の先送り(スキップ)を提言している。と同時に、消費増税(財政緊縮)ではなく、いまの日本の状況では財政拡大こそが望まれるとしている。もちろん金融緩和の継続、そして追加緩和も早急に必要とされるだろう。

 最近の政府首脳サイドの発言をみると、消費増税のスキップをするハードルが徐々に引き下がっている印象がある。安倍首相は以前はリーマンショック並みの経済危機がないかぎり再増税を行うとしたが、最近では菅官房長官の発言では税収低下や株価下落などが再増税見送りのシグナルになっている。世論調査をみても、消費税再増税見送りを支持する意見は圧倒的多数だ。むしろ、安倍政権が再増税すること自体が、サプライズともいえる状況が生まれつつあるといえるだろう。

 だが、仮に消費再増税が再び先送りになったとしてもそれは経済状況の確実な破たんを回避しただけであって、現状の消費低迷、経済低迷を治す処方箋ではない。消費低迷の原因が、消費増税なのだから、抜本的な政策は「消費減税」であるはずだ。望まれる消費減税の幅は3%だろう。最近では、財務省の支配下にあるといっていい経済財政諮問会議から若年層向けの商品券をばらまく政策が、消費低迷の対策として提起されてきている。だが、この政策の効果はきわめて限定的だ。なぜなら消費の低迷が持続しているのは、消費増税が持続的な悪影響をもっているからである。その持続的な効果を打ち消すのに、一時的(単年度)の商品券ばらまき政策はほとんど効果をもたないだろう。同じことが一時的な給付金や減税政策にもいえる。

 現状の日本経済を救済できるのは、継続的な効果のある財政政策(最善は3%の消費減税、次善の策としては持続的な(複数年度にまたがる)減税と給付金政策)と、さらなる追加緩和政策(最善はインフレ目標の引き上げ、名目国民所得ターゲット政策の採用)である。

 政策の舞台は、消費増税のスキップは当然(仮にすれば日本経済は再び大停滞へ、安倍政権は終焉、続く政権も短命化必至)で、むしろ消費減税にその力点は移りつつあるといえるだろう。